第9話 家族



 町の人たちから話を聞いた乙川達は、それぞれが集合場所へ到着する。


 しかし、オニキスはまだ来ていないようだった。


 相談した乙川達は、オニキスの家を探して向かった。


 すると窓越しに見えるのは、病気の母親を看病するオニキスの姿だった。


「母さん、大丈夫? 無理はしていない?」

「平気よ。あなたも知ってるでしょう? 旅人だった2丁目先のミースさんが、親切にしてくださっているもの。だからオニキスは旅を進めてちょうだい」

「それならいいんだけど」


 乙川達がこそこそ家の中を窺っている間、不審な男性がやってきてオニキスの家に食べ物を投げたり、石を投げたりしはじめた。


「おいおい何やってるんだ。人ん家の壁汚しちゃいけませんって、ママに教わらなかったのか?」


 乙川が注意すると、その人物は理解できないといった顔をする。


「犯罪者なんて人間あつかいする理由ないだろ? お前らオニキスのなんなんだよ」

「恋人って言ったらどーする? イケメンのおにーさん」


 乙川は精いっぱい猫をかぶって笑った。

 男性は頬を赤くし、ロメオはメロメロになり、スケイスはただ空を飛んでいる鳥を眺めている。


「あいつはよしな。どんな甘言に騙されたか知らないけど、あいつと付き合うよりほかにマシな男がいっぱいいると思うぜ。例えばほら、俺とか」

「えー、おにーさん?」


 乙川はこれまでの女装技術を磨くついでに磨いてきた、可愛い女の子ようのしぐさを再現しながら、男性の顔をのぞきこむ。


「相手の事きちんと見もせず、人に言われた印象だけで判断するような野郎願いさげだね。上っ面だけで判断するから俺のような悪い男に騙されるんだぜ」


 男の声でそう言った乙川を、男性は信じられないものを見るような顔になった。


 そして真っ赤になって「俺こそごめんだぜ、この嘘つき野郎」と吐き捨てて去っていった。


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