砂漠でドラゴン保全やってるおっさんだけど、本当に辞めたい誰か助けて。

かんぽうやく

プロローグ

 昔々。ドラゴンが住むオアシスを愚かな人間が横取りしようとしました。


 それからしばらく、人類とドラゴンは縄張り争いで殺し合いを続け、お互いに疲弊と消耗でくたびれてゆきました。


 疲れきった人類とドラゴンは、和平協定を結びました。ドラゴンは不用意に人類に近付かない、人類は不用意にドラゴンを傷つけないという協定です。


 その時のいざこざで発生したドラゴンの魔術によって、砂漠は流砂のように何でも飲み込む砂の大海と化し、人類は魔術駆動の機械を船に組み込むことで砂の海を渡れるようになりました。


 砂の海を渡るための技術や道具は非常に高価な値段を付けられ、安売りを禁止されていました。入手方法を制限することで、ドラゴンに近付く人類の数を制限するためです。



 協定締結から十年。


 人類とドラゴンの仲は一応の平和を保っていました。


 しかし、ドラゴンに慣れてしまうあまりに恐れを無くし、密漁し、高級素材として売り飛ばそうとする愚か者が目立ちはじめました。


 ドラゴンを守るため、砂漠の戦闘部隊を中心としたドラゴン保全部隊が結成されました。



 保全部隊の結成から二十年。


 長引く不景気による経営難と後継者不足のため、保全部隊の経営はうっすらと傾きかけてきました。


 せめてもの対策として、オアシスの巡視船を遊覧船に改良して一般観光客を乗せ、船の維持費の足しにしようと考えました。


 定期的に運航する砂上バスに比べ、砂漠に定住するドラゴンの群れをたまに見られる遊覧船は、そこそこの売り上げを出すようになりました。


 巡視船『サハラヴァイパー』改め遊覧船『にっこりオアシス丸』は、今日も余計な修繕費など出さないよう、慎重に砂の海を進んでいるのです。

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