追放されたドラゴン好き令嬢は、北方辺境伯の愛に気づかない
雨宮いろり/ビーズログ文庫
プロローグ
プロローグ①
「ミルカ・アールトネン。お前との
それは断頭台の
言われたことが
そこにいるのはハンス・ヴィイ・ヴォーハルト。
セミスフィア王国の第二王子であり、つい先ほどまでは、私の婚約者だった。
(私……婚約破棄をされたの?)
信じられない気持ちで口を開く。声が
「私、何かご不興を買うようなことをしましたでしょうか」
「馬鹿め。お前のような悪女が、
悪女、という言葉が、頭の中でこだまする。
今まで自分がやってきた
混乱して何も言えない私に、ハンス王子が
「両親を
「仇で返すなど、そのようなつもりは」
「言い訳は無用。――この愛らしい
彼の
質素なグリーンのドレスに身を包み、
「質実
ネックレス、ピアス、ブレスレット、その全てに色とりどりの
「王子である私よりも大きな宝石を身に着けているではないか!
「た、確かに宝石を身に着けておりますが、これはドラゴン飼育のためです! ドラゴンは大きな宝石を持っている者を上位の者として
「そのドラゴン飼育の仕事も手を抜いているだろう! 王族に伝わりしプラチナドラゴンの
その言い方に、私は自分が
「
「ハッ、ここからドラゴン舎まで声が届くものか。そもそも、お前がずさんな仕事をしているせいで、まだ子どもなのだ。
ドラゴンに
プラチナドラゴンのような知性の高いドラゴンは、自分に関する評価であれば、たとえ
ましてや自分を飼っている王族の言葉だ。今のハンス王子の言葉は
私の心配をよそに、ハンス王子は額に青筋を
「六年だぞ? それほどの時間がありながら、なぜあのドラゴンは成長しない! それもこれも
六年前に生まれたプラチナドラゴンの仔は、オパールのような体色で、
私たちアールトネン
だから、ドラゴンを成長させられない責任の
「
ひゅっと息をのむ。
北方辺境。重罪を
首を
「わ……私も父も、
「
そう言ったハンス王子は、顔を
「ああ、すまない。それ以前の問題か。お前には、立てるべき男が寄りつかないのだったな。『キズモノ』なのだから」
「……ッ」
目の前が暗くなるほどの
けれど、なけなしの
(今更何を言っても、この判断は
何も言い返せずうなだれる私を見て、アンナという少女が口を開いた。
耳にこびりつくような、ねっとりと甘い声が
「ここまでハンス様に言われても、反省の色一つ見せないなんて。
「全くだ! そもそもこの女は、無能で浪費家であるばかりでなく、不敬なのだ。プラチナドラゴンの仔が育たないのは私に原因があると言い出して、私にドラゴンの生態を学べなどとのたまう!」
おぞましい、とばかりにハンス王子は顔を歪めた。
「ドラゴンは我ら王族が
言葉を失った私を見て、アンナがふっと笑みを浮かべた。
「この方には永遠にハンス様の
「ああ、お前は
アンナに向けたハンス王子の声は聞いたことがないほど甘い。それは私の心にぎざぎざと
私は
「我らアールトネン家の力が
「
「いえ、ドラゴン舎にいるアールトネン家の飼育人は、そのまま
「お前は馬鹿か? アールトネン家の育て方が悪いからプラチナドラゴンの仔は育たなかったのだ、同じ
それを聞いた
もう、ハンス王子とまともに会話することはできなさそうだった。
ハンス王子は追い打ちをかけるように叫ぶ。
「アールトネン家の家財と
その
ぐずぐずしていれば、本当に全てを取り上げられてしまう。
私はたまらず
全速力で走ったせいで、顔に強風が
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