プロローグ



 季節の花々に囲まれた中庭のガゼボというごうしやな場所で、ユリアーナは小さな体を震わせながら、バルリング帝国皇太子フォルクハルトとテーブルを挟んでたいしていた。輝くシルバーブロンドの美丈夫が、アクアマリンの瞳でユリアーナを射貫く。

「リア。おまえは、何者だ?」

 悪役令嬢としての運命を変えるため、魔法で十八歳の体を四歳に変えた。身分まで自国の王女だと偽って、帝国皇太子の婚約者となった。本当は王女などではなく、ロジエ公爵令嬢である。正体がバレたなら、即極刑の可能性もある。

(もう、誤魔化せないわ)

 ユリアーナは、命懸けで遠く離れた帝国までやってきた。自分の決意を信じ、フォルクハルトをまっすぐに見つめ返し、ゆっくりと口を開いた。

「おこたえいたします。でしゅが、そのまえに……」

 なぜこのようなことになったのか。ユリアーナは、これまでのことを振り返りながら、慎重に言葉を選んだ。

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