ガラスの向こう

地下駐車場の冷たい光は、まるで無数の小さな針が網膜に突き刺さるように目を刺した。アルヴィンは車からゆっくりと降り、ブーツが滑らかなコンクリートに鈍く響いた。空気は無菌で動かず、オゾンと熱された金属の匂いが漂っていた。




遠くで換気扇が低く唸り、静寂の中に不気味な背景音を織り交ぜていた。それはまるで、見えない獣の息遣いのようだった。トンネルを抜けてきた道は背後に消え、目の前にはただ無機質な金属の扉があった。まるで彼と外界を隔てる壁のように。




黒い制服を着た二人の衛兵が動かず立っていた。彼らの顔はホログラフィックマスクで隠され、特徴がノイズのように歪んでいた。一人が前に進み、手に持ったポータブルスキャナーを掲げた。緑色の光がアルヴィンの体を頭からつま先まで走り、肌に軽いチクチク感を残した。




アルヴィン(内心):「スキャン…武器?インプラント?それとも私のデジタルコピーを作ってる? 何もない。初めて、自分の『無垢』が弱点に感じる。まるで彼らの機械の前で裸にされているみたいだ」




「動け」と、衛兵の一人が感情のない機械的な声で言った。もう一人は影に溶けるように後退した。




ディランが車から降り、暗いジャケットを整え、アルヴィンに短く視線を投げた。その目には悪意も同情もなく、ただ任務を終えた空虚さがあった。




「ドク、ホルトを連れてきました。ID-93579275。無垢です。私の仕事はこれで終わりです」と彼は、見えない相手に話しかけた。声は落ち着いていたが、従順な響きがあった。




彼は衛兵に視線を移した。「他の任務に必要です。幸運を、坊や」




最後の言葉はアルヴィンに向けられたが、そこに温もりはなかった。ただの形式的な言葉だった。ディランは踵を返し、駐車場の空虚な空間に足音を響かせながら去っていった。




衛兵がアルヴィンを軽く、しかし確実に扉へと促した。扉は音もなく横に滑り、人工的な空調の暖かい風が化学的な匂いとともに彼を包んだ。アルヴィンは一歩踏み出し、息を呑んだ。




目の前に広がる光景は、心臓を締め付け、思考を混乱の渦に巻き込んだ。彼は広いバルコニーに立っていた。そこから見下ろす地下の複合施設は、まるで地中に隠された都市だった。暗い洞窟や廃墟の倉庫ではない。




これは「中核」—後にドクがそう呼んだ名前が、完璧に当てはまる場所だった。白い研磨された金属と強化ガラスの壁が、天井の強烈な光を反射し、無限の空間の錯覚を生み出していた。




透明な廊下を、白や青の白衣を着た人々が機械のような正確さで動き回っていた。中央には巨大な円筒形の装置がそびえ、青く脈打つケーブルが血管のように伸びていた。




ホログラフィックインターフェースが空中に浮かび、複雑な図表—神経ネットワークや分子構造、理解できないグラフ—を表示していた。下の階では、拳ほどのドローンがナノ素材から何かを作り上げ、精密なマニピュレーターが宝石のような正確さで動いていた。




音—発電機の低い唸り、機械のクリック音、抑えた声—は、まるで巨大なプロセッサの心臓に迷い込んだような感覚を与えた。




アルヴィン(内心):「信じられない…私がブラックマーケットで見たものは、技術の頂点だと思っていた。でも、これは…まるで誰も知らない未来を覗いているようだ。あるいは、天国に偽装された地獄かもしれない。なぜこれが隠されている? この力で何をしようとしているんだ?」




衛兵が再び彼を押し、アルヴィンは金属の階段を下りながら目を離せなかった。ガラス張りの廊下を通り、研究室の向こう側が見えた。一つの部屋では、針のようなマニピュレーターが神経インターフェースらしきものを組み立てていた。




別の部屋では、医療用サルコファグのようなカプセルが無数のワイヤーに囲まれ、人間のシルエットが動かず横たわっていた。アルヴィンは喉を鳴らし、背筋に冷たいものが走った。




アルヴィン(内心):「あれは…人間? それとも何か別もの? 生きてる? 眠ってる? それとも…考えるな。今はダメだ」




廊下は広いプラットフォームで終わり、そこで彼女が待っていた。ドク。完璧な白い白衣をまとい、黒髪を厳格なシニヨンにまとめた女性。顔は若々しかったが、目は魂の年季を物語っていた。科学者の冷たく探るような輝き、凡人には見えないものを見た者の目だった。




「アルヴィン・ホルト」と彼女が言い、絹のような柔らかい声が鋼よりも鋭く響いた。「ようこそ、中核へ」




アルヴィンは凍りつき、言葉が見つからなかった。恐怖と好奇心がせめぎ合い、彼は拳を握り、震えを抑えた。




アルヴィン(内心):「私の名前を知ってる。当然だ。彼女たちはすべてを知ってる。この視線…まるで私が彼女の機械の部品か、珍しい獣でも見るようだ」




「リラックスしてください」とドクが続け、手を軽く振ると衛兵が敬意をもって後退した。「我々はあなたを傷つけません。むしろ、あなたは未来の入り口に立っています。ここ、中核で、我々は世界を変えるものを作っています」




「未来?」アルヴィンの声は思ったより小さく、だが怒りが恐怖を突き破った。「人を誘拐して作る未来? 私より前にここにいた人たちはどうなったんです? 消えた人たちは?」




ドクは一瞬黙り、顔にわずかな変化が走った。ほんの一瞬、視線が遠くなり、数十の顔を思い出すようだった。悲しみではなく、苛立ちのような影がちらついた。




ドク(内心):「好奇心が強い。あまりにも。話すべきか? いいえ、彼を壊してしまう。彼は…安定していなければならない。少なくとも今は」




「知の探求には犠牲がつきものです」と彼女は曖昧に答え、視線が再び鋭くなった。「しかし、あなたは、アルヴィン、犠牲ではありません。あなたは可能性です。インプラントで汚されていない、純粋な存在。それは希少です。価値あるものです」




アルヴィンは眉をひそめた。彼女の言葉は褒め言葉のようだが、脅威が潜んでいた。さらに尋ねたかったが、側廊からリアナが飛び出してきた。作業着には油のシミがつき、髪は雑にポニーテールにまとめられ、データが浮かぶタブレットを手にしていた。




「ドク! 全部準備OK! 部屋は安定、センサーもバッチリ!」彼女はアルヴィンを見つけ、大きく笑った。「やあ、ねえ! どう? うちのラボ、ブラックマーケットとは比べ物にならないでしょ?」




アルヴィンは彼女の率直さに圧倒され、思わずうなずいた。




「すごい」と正直に吐息した。恐怖があっても、驚嘆せずにはいられなかった。子供の頃の技術の夢が現実になり、恐ろしいほどリアルだった。




「でしょ!」リアナは手を叩いた。「ここ、全部生きてるみたい!」




「リアナ」とドクが柔らかく、しかし鋭く遮った。「時間がない。ゲストの部屋を準備して」




「もうできてるよ、ドク!」リアナはうなずき、アルヴィンに熱い視線を投げた。「またね、ホルト! 怖がらないで、めっちゃクールだから!」




彼女は廊下を駆け抜け、ガラスの壁に足音が響いた。アルヴィンは彼女を見送り、心臓がさらに速く鼓動した。ドクが再び彼に向き直り、顔は読めなかった。




「我々にはあなたのような人が必要です」と彼女は声を落とし、共謀者のように囁いた。「無垢な人。インプラントで汚されていない身体と心。それが我々の創造の鍵です」




「鍵?」アルヴィンは繰り返し、意味をつかもうとした。「何の? 他の人は? 鍵じゃなかった人たちは?」




彼女の視線は刃のように鋭くなり、沈黙が言葉以上に語った。彼女の目に一瞬の影—後悔ではなく、冷たい認識—が映った。アルヴィンは内臓が縮こまるのを感じた。




アルヴィン(内心):「死んだんだ。それとももっと悪いこと。この場所は研究室じゃない。屠殺場だ。そして私が次だ」




叫び、答えを求めたい衝動を抑え、彼の視線はホールの遠くに動く影を捉えた。衛兵に連れられた二人、男と女。ディアナとイリヤ。新たな隣人だ。顔は青ざめ、目は伏せられていたが、一瞬、彼らの視線が交錯した。そこには抑えた動物的なパニックがあった。




彼らはアルヴィンを認識したが、つながりを隠すように視線を落とした。別の暗いホールへ続く扉へと連れられていった。




アルヴィン(内心):「彼らも…私と同じ。インプラントなし。無垢。何人いるんだ? なぜ私たち? 偶然じゃない。彼らは私たちを狩ったんだ」




「部屋の準備完了!」リアナの声が遠くから響いた。彼女は開いた扉の前に立ち、部屋には医療用の椅子と、天井から伸びる無数の機械の触手があった。触手の先は光を反射し、天井のセンサーは赤く微かに輝いていた。




壁はコードとグラフが流れるタッチパネルで覆われていた。アルヴィンはその扉を、遠ざかるディアナとイリヤを、そしてドクの完璧な顔を見た。すべてを理解した。逃げる? 笑える。抵抗? 無意味。進むしかない、知られざる闇へ。




アルヴィン(内心):「これが終わりか。始まりか。わからない。でも逃げる? どこへ? 彼らは私を見つける。ここは彼らの世界で、私は何者でもない」




ドクは彼の思考を読み取ったかのように近づき、目が細まり、唇に微かな笑みが浮かんだ。「賢い選択です」と彼女は静かに言い、声には脅威が潜んでいた。「逃げようとすることは…賢明でない。痛みを伴います」




アルヴィンは答えなかった。喉が渇き、心臓がうるさく鼓動した。彼は部屋に向かって一歩踏み出し、床が隠された機械の振動でわずかに震えた。




ドクはリアナに振り返り、何かを囁いた。リアナはうなずき、いつもの陽気さより真剣な顔だった。彼女は扉を大きく開け、部屋のマニピュレーターがわずかに動き、生きているかのようだった。




「よし」とドクは固い声で言った。「彼は私が担当します」




彼女はアルヴィンを見、目に新たな光—冷たさでも執着でもない、期待の影—が宿った。リアナが下がり、アルヴィンは閾を越えた。




扉がゆっくり閉まり、明るい廊下を遮断した。最後に見たのは、ドクの顔—謎めいた、ほとんど人間ではない、真実を隠す仮面だった。




扉は柔らかく、しかし決定的な音を立てて閉まった。

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