第32話 帰国

カトレア「行けそうです。ほんの数秒ですが、きちんと日本のゲートにつながります」



最終的に、私は日本に帰る事にした。そのため、ロシアのクィンシーのアジトから、一番近いゲートを見つけ出した。

さらに、不安定なゲートに対して、カティーの持つ千里眼の魔術により、日本に帰れるルートが通じるタイミングを見計らっていた。


常に流動しているエーテルラインだが、カティーは少しだけ先の未来も見える。私が飛び込んだあと、無事に日本に転移した未来を見てくれている。これならば安心だ。



亜音「じゃあ、私はマナと暫く、JK生活を満喫してるから、仕事が終わったら早く帰ってきてよ、姉さん」


久音「ちゃんと、ごはん、食べてくださいよ… カップ麺だけじゃ、体を壊しますからね…」


亜音「じゃあ、私が体を壊す前に、全部終わらせて帰ってきてよ。姉さんのお弁当持って、学校行くんだから」


姉さんは、目に涙を溜め込んでいる。


亜音「何も、今生の別れじゃないんだからさ。頼むわよ。しっかりしなさい!」


私は、強気な言葉で涙を引っ込める。


ロイズが、「イライザもこっちに来るように連絡済み」と教えてくれた。これで、本当に日本の東京で、普通の生活に戻るんだ……



亜音「皆さん、お気をつけて。ジルさん、また一緒にゲームの対戦しましょうね」


全員と握手する。


カトレア「もうすぐ、エーテルラインのタイミングが来ます」


私は一度振り返り、みんなに向けて片手を上げてから、踵を返してゲートに近づく。

一歩踏み込むと、目もくらむほどの閃光と落雷のような轟音につつまれた。



***



ーーそして

亜音「うーん」


1人、岩肌の上に寝転んだ状態で目を覚ます。辺りは真っ暗だ。


亜音「洞窟か」

呟いた声が反響して響く。


そして、手探りで登りながら出口を目指し、無事に地上に出た。辺りを見回すと、うっそうと茂った森の中だ。


近くに『借金は必ず解決出来る!』と、日本語で書いた看板があった。

亜音「だったらここに来てないわよ…」


独り言を言って、無事に青木ヶ原樹海に到着できた事を安堵した。



***



亜音「ただいま」

R34に乗り、無事に東京の自宅に到着した。すっかり日が暮れていた。


マナ「おう!おかえり~、おひさ〜」

マナが出迎えてくれた。


亜音「うん。どうだった?イライザさんは?」



そして2人、会っていなかった間のお互いの話をテイクアウトで買ってきた牛丼を食べ、ビールを飲みながらした。


なんか、不思議な感覚だな。長い夢から覚めたみたいだ。



***



ーー翌朝、高校にて



亜音「……おはよう」

マナ「おは〜」

クラスメイト「おはよー」


小声でマナに話しかける。

亜音『おい、マナ。普通に登校しちゃったけど、大丈夫だったの?』

マナ『亜音は家族の仕事の都合で、暫く休校って事で暗示をかけておいたからな〜』


亜音「そっか、サンキュ。色々聞かないといけなかったわ。この街の結界とか、私らの立場とか、今はどういう状況なん?実銃は普通に上着の下に持ってきたけど」


マナ「亜音が出ていく前のまんまだぁね。ウチもイラ姉と魔術の練習してたから、結界は、弱ったら張り直してる。そのへん撃ってみ、誰も気にしないから」


亜音「じゃあまだ、間宮狙いの刺客は来てるって事?ずっと狙われ続けてる?」


マナ「……うん。まあ、わりとよく来るわな」


……2人とも黙る。



亜音「私ら、姉さん達がいなければ銃を扱えるだけの普通のJK……」


マナ「あ、やべ。弾切れとかになったらどうしよ。9パラとか5.56とかってコンビニに売ってないよな?」


命を狙われている私達にとって、銃弾は乾電池並みに身近で手放せない物だからな……



亜音「そう簡単には、普通のJK生活は満喫出来ないってか?」


マナ「……いや、まあ、ダイジョブなんじゃん?ウチら、今までもそういうノリで乗り切ってきたし?」


いつもは無責任な言葉に感じていたけど、今はありがたい。



亜音「……なるようになる、か?」


マナ「弾丸も相当量あるからな〜。銃器種を選ばなけりゃ結構保つだろね〜」


亜音「弾が尽きる前に、世界情勢は変わっているかも知れないし、姉さん達も……」



……帰ってきて、くれるよね?姉さん。

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