第25話 ブレイクタイム

イギリス、ロンドンの任務はひとまず終わった。

まさか本物の軍隊と戦うとは思っていなかったが……


ロイズの情報では、今のところ揉めてそうな事案は無さそうとのこと。

今はまず、消耗品の補充の為に姉さんのアジトに向っている。



亜音「姉さん、イライザさんってクィンシーじゃないのよね。どういう経緯で知り合ったの?」


久音「大した話じゃないですよ。私の仕事のターゲットがイライザさんだった事があって、狙撃に気付かれて、それから1週間ほど殺し合って。でもお互い致命傷を負わせられなくて。最後は『飽きた』ってイライザさんから手ぶらで私のところに来て、チャンスだったので撃ったんですけどナイフで弾かれちゃって」


亜音「さらっと言うわね」


久音「で、じゃあ依頼主を殺っちゃいますかって、意気投合して」


亜音「殺しの意気投合……」



それから、たまに現場で顔を合わせることが増えていって、一緒に仕事を請け負ったりする事も出てきたらしい。



久音「まあ、未だに隙を見せると撃ってこようとしますけどね」


笑いながら言う姉さん。

好敵手と書いてライバルと読む、ってことかぁ。


亜音「そう言えば、前に任務中に知り合った好きな人がいるって言ってたわよね。あれってイライザさんかぁ」


久音「違います、違います!好きとか、そんなんじゃなくて…まあ、好き、には好きなんですけど」


顔を赤くして口元を手で隠す姉さん。嘘がつけないよなぁ、この人。



久音「あー、あと、イライザさんはロイズさんの妹なんですよ」


話を反らしたように言ったが、なかなかショッキングな事を言ったな、おい。

クィンシーの妹の暗殺依頼を、クィンシーが受けたって事なのかよ。



***



久音「やっぱり食玩は日本の文化ですよね……」


姉さんが肩を落とし、ため息混じりに呟く。


帰り途中の買い出しで、街のスーパーマーケットに寄ったのだが、やはり日本と違って食玩がほとんど無い。



亜音「しょうがないわよ。こっちにいたら通販とかで買うしか無いんじゃない?」


久音「早くうちに帰りたいなぁ……」



それは私のうちの事だろうか。


亜音「そうね。マナもいるんだし、久々に帰りたいわね」


久音「でも2人とも、絶対にお酒を飲みますよね。間違いなく揉まれるんだろうなぁ」


亜音「揉む価値のあるモノを持っているということに自信を持ちなさいよ。私だって……」


自分の胸を見る。ストーンとしているな……


亜音「まあ、暗い話は置いといて、姉さん御用達の銃砲店に行ってみたいんだけど」


久音「あ、はい、いいですよ?この近くにあるので、そこでついでに消耗品も買っておくつもりでしたので」



おー、最新の欧州の裏の実銃事情が分かるのか。

ワクワクするな。日本じゃ絶対にあり得ない。



***



『カラカラ〜ン』


まるで喫茶店みたいな店のドアを開ける。

前に行った銃砲店よりも、ずっとボロい。看板も文字がすり減ってなんて書いてあるか読めない。


店主「いらっしゃいませ」

久音「こんにちは」


ん?カウンターのガラスケースに、オートとリボルバー合わせて四丁が入っているだけだ。


SIG P320、GLOCK G26、S&W M&P、チーフのバリエーションモデルの5連発リボルバー……

なんかこう、壁とかにズラッと並べておいてあるイメージだったのだが。


久音「あの、奥、見させて貰っていいですか?」


姉さんはそう言って名刺のようなものを店員に見せた。するとカウンター横の扉の鍵を開けてくれた。



久音「こっちですよ」


…………き、きたーーーー!!


大量の、たぶん民間向けじゃないヤツが、ところ狭しと置いてある。


亜音「あ、あ、あ、あうあうあう」


久音「我々、裏社会の人間は、基本こんな感じで銃器を手に入れるんですよ」


亜音「これ、これ欲しいぃぃぃ」



TKB022P……マガジンをグリップとして使う、ブルパップの元祖とも言える銃。

結局はAK47の方が正規採用されたため、マボロシに終わってしまったやつだ。

それが、こんなところに……


久音「面白いですけど、これ、コレクションの域を出ませんよね……この銃で護衛はされたくないっていうか……」


だよね。私もイヤだ。



亜音「あ、姉さん、PSG-1あるよ」


久音「あんまり高価な物には触らないで下さいね〜」


亜音「私、1週間はここに居れるわ」


久音「暗くなる前に帰りますよ〜」



***



亜音&久音「ただいま〜」


姉さんのアジトに無事帰ってきた。なかなかにハードだったなぁ。本物の戦場を味わったし。


亜音「じゃあ、今夜の晩ご飯は贅沢に行っちゃいますか!」


チャーハン、餃子、唐揚げ、焼きおにぎり……


欧州にもニチレ◯の冷凍食品があって助かったわ。


久音「やっぱり日本の冷凍食品は偉大ですね」

亜音「ね。台所も食器も汚さず、水も使わない。どんだけエコなんだよ」


ついでにお酒も……


久音「まあ、今夜は細かいことは言いませんよ。私も頂きますね」



チーズをかじりながらワインをちびちびと舐める姉さん。

ハムスターみたいでカワイイ。


チンした枝豆を食べながら、ビールを飲む私……

女子力低いな……

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