第18話 ユーレカお姉様と一緒
亜音「ロイズさんの事、大好きなんですね」
ユーレカ「ふふ。さて、それはどういう意味かしら」
何このユーレカさん、思春期の心をえぐってくる!すごい好き!
ユーレカ「でもね、話だけだけど、久音と亜音の関係も私から見るととても好印象に見えるわよ。お互いに軽口を叩いていても、深いところでは信じ合っているのでしょう?」
そうかな?私、姉さんの事……どう思ってるんだろう?
ユーレカ「きっと気付いていないから、自然体でいられていいのよ」
***
ユーレカ「どうしたの?」
亜音「ここに来る時に、私の腕時計が壊れちゃって……姉さんは機械式だったから大丈夫だったみたいなんですけど」
ユーレカ「あら、では次は時計屋さんに行きましょうか」
そう言うとユーレカはどんどん先に進んでいった。だんだん周囲の建物が大きく、上品になっていく……これはいわゆるブランド街ってやつ?(庶民の語彙力の貧相さよ……)
ユーレカ「私が選んでもいいかしら?」
えっ!ユーレカさんが選んでくれるの!?っていうか、こんな高級ショップで!?
亜音「いえいえいえ!なんか高そうですし!いいですよ!」
ユーレカ「あら、私からのプレゼントは受け取りたくないって事なのかしら?」
いたずらな笑顔で言う……大人の女だな〜。
亜音「……では、お言葉に甘えて……」
スッと、なんだか尋常じゃない高級店に入っていった。私みたいな庶民が、いいのだろうか……
しばらく店内の時計を見て回る。宝石とか散りばめられてるものばかりだ。とても似合わないし、全然趣味じゃない。どっちかといえばメンズの方が……
と、ユーレカに呼ばれた。
ユーレカ「亜音は可愛いらしいけど、行動がボーイッシュでアクティブだから、頑丈なのが良さそうね……こんなのはどう?」
そう言って、ガラスケースの中の1つを指差した。八角形の形状で、ネイビーの盤面のクロノグラフ。おお!カッコいいじゃん。えっと、値段は……って、値札が付いてない。なんだこのセレブの世界は!
ユーレカ「どう?一度あてがってみない?」
ユーレカに言われるがまま、どんどん話が進んでいき、ブレスレットの長さ調整も終わった。
ユーレカ「とても似合っているわよ。では、このカードで」
***
亜音「ユーレカさん!ありがとうございました!」
ユーレカ「いいのよ。聞いたわよ、今年高校に入学したのでしょう?少し遅い入学のお祝いよ」
そういう大人の余裕、うちの姉さんには無理だな。買ってもらった時計はそのまま腕に付けている。うへぇ、なんかピカピカで、でも宝石とか無くて、渋くて、クロノで、超カッコいいじゃん!
なんてメーカーか読めんが……オーデマーズ•ピジェット?知らん。
ルミノックスとかオメガよりも高いのかなぁ…
ユーレカ「さあ、買い物も終わったし、久音の事も気になるでしょう?」
ユーレカさんが、車まで見送りに来てくれた。
400Rのステアリングを握るとき、ちらっと腕の時計に目がいく。どんどん馴染んでくる気がする。私、今、カッコいいかも〜。
ユーレカ「フフ、気に入って貰えたようで良かったわ。ロイズにも久音にも、宜しくね」
***
帰ってきてから、取り敢えず読み方だけでも、と思って買ってきたばかりのスマホで調べたんだが、オーデマ・ピゲって言うのね。
お値段は……オープンザ・プライス!
『いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん、ひゃくま……』
ゼロの数が多いことは分かった。
深く考えるのはやめたほうがいい。
程なくして、家のドアが開いてロイズが帰ってきた。
ロイズ「あ、亜音おかえり。ゴメンねー、細かい事教えないでお使い頼んじゃって。ユーレカには無事会えた?」
亜音「あ、はい。色々とユーレカさんにはお世話になっちゃって…」
ロイズ「なら良かったわ。さて、私はシャワー浴びてきちゃうわね」
***
夕飯を食べ終わり、2人で晩酌…と言っても、ロイズさんはキンキンに冷えたエナジードリンクを飲んでいる。私はビールを…
ロイズ「やっぱり、ひとっ風呂浴びたあとのエナジードリンクは最高ね!」
この人、謎が多いなぁ。
すると、寝室のドアが開いて姉さんが……
久音「ふわぁ、ご心配をお掛けしました。もう、すっかりと……」
亜音「姉さん!大丈夫なの!?」
まだ顔が赤いし、ふらついている……
久音「だいじょう……ぶ……」
倒れる姉さんを抱きとめた。立ってられないんじゃ起きてくんなよ!!
亜音「ロイズさん、すみません。心配ばかりかけてしまって……」
ロイズは笑顔でこっちを見ている。
ロイズ「ふーん、いいパートナーじゃない。ちょっとユーレカが恋しくなってきたわ」
姉さんの肩を持ってベッドに連れて行く。
亜音『頑張りすぎよ。もう少し甘えてくれていいんだからね』
久音『腕時計……とっても似合ってますよ』
亜音『バカたれ、そんなのいいからしっかり寝ときなさい!』
絶妙に嬉しい事を言いやがって!ホントに世話のしがいがあるんだから……
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