第10話 MA IKKA
亜音「やれやれ……」
久音「ふへ〜、もう食べられませんよぉ〜」
マナ「…………」
あれから何もなかったかのように宴会を再開し、マナはだいぶ複雑そうだ。
マナ「亜音、死ぬ覚悟だったんだけど、なんか死に損ねちゃって、逆に恥ずかしいんだけど……」
亜音「まあいいんじゃない?久音姉も、昔は敵対していた魔術士達と仲間になった事もあったらしいし。あれよ。ドラゴ◯ボールみたいなノリよ」
マナ「んなアホな…… まあ、今の状況を見ると信じるしかないんだけどさ…… ねえ、亜音、本当にごめん」
亜音「やめい。今日は卒業パーティーなんだからさ〜、別にマナだって被害者だったんじゃん。そこに気付けなかった私も親友失格?みたいな?」
マナ「……ありがとう」
マナは私の手をギュッと握った。
亜音「でも、明日は聞きたいことが山ほどあるから覚悟しとけや〜」
マナ「……うん、分かってる」
亜音「じゃあその辛気くさい顔はやめて、飲め飲め〜」
マナ「……っしゃ〜!!」
ーー翌朝
亜音「さて……洗いざらい吐いて貰いますか」
久音「知ってる範囲でいいので、出来るだけ詳しく教えてください」
マナ「…………っぷ、おえっ……吐くぅ〜」
亜音「待て待て!物理的に吐くな!トイレまで我慢しろ!」
***
マナ「失礼しました。もうダイジョブです」
久音「それじゃあ、初めに確認させてください。マナさんはこれから先、どうしたいですか?」
マナ「……今まで15年間、ずっと道明寺の言いつけを守って生きてきました。正直、全然分かんないんすけど、出来るならこのまま学生生活を続けたいです。亜音と一緒に」
亜音「オッケー。だったらさ、私達の暗殺に失敗。亡き者にされたってシナリオでイイんじゃない?細かいことは姉さんの洗脳魔術で辻褄合わせてさ」
マナ「……そんな事って出来るんすか?」
久音「まあ……一応。あとは、雇われ主って誰なんでしょうか?」
マナは口ごもった。
マナ「……スンマセン。分かんないんすよ、ガチで。ウチは実行命令されただけなんすよ」
亜音「マジか。使い捨てってか」
久音「それではしょうがないですね。財閥や財団は、決して表に顔を出さない裏の組織です。私も裏社会の人間なので、そういった事情はよく知っていますから」
マナは暗い顔で沈み込んでいる。
亜音「んで、マナはこれからどこに住むん?一応道明寺家に対しては、死んだって事にしとくんでしょ」
難しい話はあとだ。まずは目の前の事から片付けてしまおう。
マナ「よし!まずは物件探しだな。でも金が無いな。どうすっかな〜」
こっちをチラチラ見る。分かったよ……
亜音「じゃあうちの空いてる部屋な。2階は私と姉さんの部屋にしてるから、1階の親の寝室を使ってくれ。別にどう模様替えしても構わんよ」
マナ「え〜、亜音とお姉様は2人でヒミツの花園に暮らしてるって事〜?いいな〜、えっち〜」
亜音「ちゃうわ!別々の部屋だっちゅうの。で、荷物はどうする?お前、帰るわけにもいかんだろ」
マナ「それならダイジョウビ!全部持ってきたんだ〜。夕べの任務が終わって、もし生きてたら、この街と道明寺から逃げようと思ってたからさ」
なんだかんだで前向きなのな。マナは玄関先に隠してきたボストンバッグを持ってきた。
マナ「え~っと、サバゲ関連のコスプレ一式でしょ、あとはメインウェポンとサブ。ミリメシ。簡易トイレ、救急箱とナイフ。カモフラージュ用のメイクキットもあるぜ」
コマ◯ドーかよ。どこの戦場に行くつもりだ。
久音「では、まずはこれで一段落でしょうか。恐らく、マナさんが夕べのうちに戻って来なければ、私達の暗殺は失敗したと判断されているかも知れません。待ち伏せていたスナイパーもやっつけちゃいましたしね。この先、ここに住み続けるとすれば、引き続き刺客が来るでしょうね」
どうすんだよ……
亜音「はぁ〜」
そりゃ溜息も出る。
久音「考えようによっては、こちらも戦力が増えたので、イーブンかも知れませんよ」
マナ「久音姉様……優しいっすねぇ」
亜音「たぶん、あんまり深く考えてないだけっしょ」
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