第7話 鉄砲遊びバンザイ
亜音「ところで姉さん、すごい大事な話があるんだけど……」
私は真剣な顔でまっすぐ見つめた。
久音「は、はい。なんでしょうか?」
亜音「姉さんのM66見せてもらっていい?」
久音「?はい、いいですけど……」
姉さんからリボルバーを受け取り、取り敢えず弾を全部抜く。そしてシングルとダブルアクションで何度か空撃ちした。
亜音「……やっぱり」
久音「どうかしましたか?別に変わったところは無いと思うんですけど……」
亜音「だからよ、特別な事をしているわけじゃないのに、このシリンダーとストッパー、ハンマーとトリガーの動きの滑らかさは一体どういう事よ。
あ、そういえばキングコブラもあったわよね。あれ、出して」
私が命令するままに、姉さんは用意してくれた。コイツも空撃ちで何度も撃ってみる。
亜音「コルト特有のシリンダーの引っかかりとかオーバーシュートが全く無い……」
久音「まあ、長く使っていればそのうち摩耗してガタが出てきますよ〜」
亜音「じゃあさ、私のモデルガンを見てもらえる?」
M19とパイソンの金属モデルを姉さんに渡す。
スイングアウトして、『あぁ〜』とそうそうに苦い顔をしてダメな部分を見つけたようだ。苦笑いしながら言う。
久音「あの…… これはオモチャですからしょうがないですよ。亜鉛合金ですよね?フレームも部品の爪も柔らかいですもん」
そりゃそうか…… 実銃の剛健さをモデルガンに求めては行けないか。でも……
亜音「そんなの嫌だ!これから先、一生トイガンじゃ満足できない体になっちゃったってことよね……」
久音「まあ、それが日本人の真っ当な生き方ですし……」
亜音「私、裏社会で行きていくことに決めたわ」
久音「それだけの理由で!?」
亜音「なんかさぁ、昨日までいろいろあって混乱気味だったけど、ガンマニアにとって今の状況ってすごく贅沢だよね」
久音「急にどうしたんですか」
亜音「だって、目の前に本物の黒光りした凶悪なアレが何本も転がっているのよ。興奮しないほうがおかしい」
久音「言い方が……」
亜音「ねえ、50口径無い?デザートイーグルでもM500でもいいからさ。今ね、一発抜いてスッキリしたい気分なのよ。つーか自分で探すわ」
姉さんの方のバッグを漁る。
お、M29。ルガーP08、モーゼルも?骨董品ばっかりじゃんか…… お!CZあるじゃん。やっぱり1stバージョンだよね、さすがは姉さん。
で、ホーググリップか。好きだねぇ。
久音「あのー」
亜音「いいねぇ。実用性どうこうは無視して、姉さんはいいセンスしてるよ」
久音「ありがとうございます〜」
亜音「このモーゼル、後で撃たせて。あと姉さんの先輩の方のバッグも見るわね」
久音「好き放題ですね……」
ほいほい、SIG P320、ベレッタPx4、グロック19、M&P9、と。面白みは無いけど安定のラインナップって感じね…… こ、これは!
久音「どうしました?」
亜音「これってスイスのCZコピーのスフィンクスよね!?どうやって手に入れたのよ!」
久音「あ、こっちに入ってましたか!
これ、私が気に入って買っちゃったヤツです。イスタンブールの露店で」
亜音「姉さん……」
久音「はい、何でしょう」
私はニヤリと笑い親指を立てた。
亜音「今度一緒にイスタンブールに行こうぜ!」
姉さんも真似してニヤリと親指を立てた。
亜音「おお〜あったあった!デザートイーグル50AE!これ、今からぶっ放すわよ」
姉さんは『はいはい』と言いながらバレットケースを開ける。何でもあるな。ドラえも◯かよ。
久音「はい、50AE弾ですよ。取り敢えず3発でいいですか?」
うしっ!装填完了。極太のグリップを握り、これまた極太のマガジンをぶち込む。
亜音「今さらだけど、結構来る?」
久音「正直、撃ったこと無いんですよ。ただ私は357マグナムでもかなり手のひらがビリビリしましたからね〜、相当だと思いますよ〜」
そっか、姉さんもないのか。いいや、それより興味のほうが勝る。巨大なスライドを引いて、初弾を装填した。
亜音「じゃあ、いくわね」
久音「腕の脱臼だけ気を付けて下さいね」
ふひひ、私は今からハンドキャノンを撃つのだ。
***
亜音「肩も肘も痛いし、手のひらは痺れてるし、耳がキーンってなるし……」
ちょっと泣いた。
久音「はい~、私も耳が……」
亜音「これ、なんか違ったわ〜、ミニミとかバルカンを選ぶべきだった〜。無い?」
久音「サイズ的にありませんよ〜。それに重過ぎてラ◯ボーさんじゃないとまともに撃てませんって」
亜音「あ〜、なんか消化不良気味〜」
私が畳の上で足をバタバタしていると、姉さんが一丁の銃を差し出してきた。
久音「あの、コレなんかどうでしょう?」
あ、MAC11。
ふむ。取り敢えず受け取ってみる。
ガスブロは持ってるけど、実銃でもそんなに重くないんだな……
コッキングボルトを引いてオープンにして、ショートマガジンを入れ、セレクターをフルオートの位置に。
ターゲットを狙って……
『ヴォーーーーーーーーッ!』
一瞬でワンマガ終わった、、、
亜音「姉さん!」
久音「はっ、はい!」
亜音「これよこれ!スッキリしたわ〜。毎秒20連、しかも9mmで撃ちやすい!」
久音「しかも亜音さんが使っている380オートと同じ弾丸なので汎用性アリですよ〜」
いいな、これ。でもMAC11って実銃でもこんなに反動が少ないんだ、、、ふとマズルを見る。
久音「あ、気付きましたか?」
亜音「マズルブレーキ、切ってある、、、」
久音「はい~、なのでフルでもマズルジャンプが少ないんです!せっかくのコンパクトサイズなのに、両手撃ちとかストック伸ばしたら勿体無いと思っていじっちゃいました♪」
亜音「姉さん、分かってるぅ♪」
久音「しかも、今なら2丁ありますよ。2丁両手で同時に……なんて、粋な事もできまっせ?」
亜音「ほほぉ、おヌシもワルよのぉ」
***
ああ、死ぬほど堪能した〜。マナも呼んであげたかったな〜。
久音「撃ちましたね〜」
亜音「いや〜、撃ったね〜。スッキリだね〜」
久音「それにしても亜音さんは飲み込みが早いですね。傭兵に向いていると思いますよ」
亜音「ありがとー、ミリオタにとっては最高の褒め言葉だわ。傭兵団に入ろっかな」
久音「でも、一発でも流れ弾に当たったら死んじゃいますけどね〜」
……だよなぁ。殺し合いだもんなぁ。
亜音「まあ、一般人にとっての一生分くらいは楽しんだし、今はトイガンで止めとくわ」
久音「でも、次に魔術士と戦うことになったら、380オート以外にも何丁か持っていける事が分かったので良かったです」
次、か…… 私はこの先、いつまでこんな生活を続けるんだろうな。
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