第6話 帰ってきた日常

玄関で靴を履きながら振り返る。


亜音「……本当に、普通に登校して大丈夫なの?」


久音「はい、間宮亜音は姉の間宮久音と2人暮らし。両親は仕事の関係で海外生活中、という暗示を、この街一帯にかけてありますから〜」


亜音「分かっていても緊張するわ。じゃあ、行ってきます」


久音「はい!行ってらっしゃい!」



***



無事に学校に着き、教室に入った。


亜音「……お、おはよう」


『おはよ〜』



クラスメイト達の反応は、普通だ。

やはり暗示がうまくいっているらしい。


『ゴトッ』


試しに380オートを取り出し、机の上に置いた。誰も気にしていない。

マガジンを抜いてスライドをカチャカチャやってみるが、やはり誰も気にかけない。と、数少ない友人の一人が声を掛けてきた。



道明寺(どうみょうじ)マナ。

数少ない、私のミリオタ事情を知る友だ。


マナ「380オートじゃん。いいねぇ、ヒーローは実銃所持が認められててさぁ〜」


亜音「ヒーロー?何よそれ」

どんな設定だ?


マナ「は?亜音とお姉さんはこの街を守るヒーロー戦隊じゃん?急にどしたん?」


なんだか、昭和の子供向けTV番組みたいな設定にされていた。姉さん……



マナ「ウチもいつも通り、護身用でガスブロ持ってきているけど……どうよ?なんか気が付かない?」


マナは制服の上着をチラッとめくり、ショルダーホルスターに収まったCZ75 1stを見せる。



亜音「お、リアにボーマーサイト。すごっ、スライド削ったの?」


マナ「HWだから強度を保つのが大変だったのよ〜、裏をアルミ板とメタルパテで補強してるけど、どこまで保つかね〜」


亜音「こればっかりは分からんよな〜」


マナ「最悪、アルミスライドも考えてるがな」


亜音「擦り合わせと動作の安定性が課題な」


マナ「それなー」



……良かった。今までと同じノリだ。


そして始業のチャイムが鳴る。みんな一斉に席に着いた。



***



ーー放課後


校門まで迎えに来てくれていた姉さんと、並びながら歩いて帰る。妙に無言だ。チラッと顔を見ると目が合った。


久音「はうぁ!」


亜音「なにその反応は。私の顔になんか付いてる?」


久音「何でもないですよ……」

姉さんは唇に手を当てて、何かを言い淀む。



私は姉さんの両頬を摘んで横に引っ張った。


久音「はわぁ、やめへくらはいよー」


亜音「隠し事は無しよ」


久音「は、はひ、話しまふよー」



私は手を離した。姉さんはあうあう言いながら自分の頬をさすっている。


久音「……ええとですね。気の所為かもしれませんが、この学校全体に不思議な空気を感じるんですよね…… 」


ふーん、まったく分からないな。



久音「一応調べてみますが、亜音さんも出来るだけ警戒しておいて下さいね」

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