第4話 異世界の街

そろそろ日も暮れてきそうになった頃、視界の先に街らしきものが見えてきた。


「お?街か?」


まだ断定できるほどはっきりとは見えていないが、これまでの自然だけの景色よりは幾分か足取りが軽くなったような気がする。


ここに来るまでにホーンラビットやスライムを倒しまくってボロボロになった木の棒は、少しの愛着が湧いていたが捨てる事にした。


先程まで豆粒の様だった街がはっきりと見えてきた。それに伴い、外壁に面した門に革鎧と槍を装備した、いかにも門番そうな人が立っている事に気づく。


「これは、まずいか?」


もし検問などで身分証明が必要になった際に、俺には証明できるものが何もない。


この世界の貨幣も持ち合わせてないから、最悪の場合は街に入らないことも視野に入れなければいけないな。


どうにか街に入る方法を考えながら歩いていると、どうやら門の手前まで辿り着いていたようだ。


「あんた、見ない顔だな。どこから来た?」


「近隣の小さな村から来ました」


早速の質問に俺はこういう場面のテンプレで返答した。


「やはりか、この時期になるとあんたみたいな年頃のやつが村から出て、近場の街の神殿に神授の儀式をしに来るんだ。あんたもそうだろ?」


「わかりますか」


神授の儀式は知らないが、話は合わせておく。


「あたりめぇよ!俺は何年もここで門番をやっているからな。街に入るには身分証の提示か銅貨3枚の支払いが必要だが、見たところどっちも持ってなさそうだな」


やはり、身分証か金銭の支払いが必要だったか。これは困ったな。


「安心しろ。横の詰め所で手続きさえすりゃ、街には入れるからな」


「そうなんですね!ありがとうございます」


助かった。街に入れさえすれば、ホーンラビットを売って宿には泊まれるだろう。


案内されて詰め所に向かうと、別の担当者が手続きを始めてくれた。


「まずはそこの紙に名前を書いてくれるかい?」


幸いこの世界の文字はなぜか理解できるし、書けたので問題なく名前を記入した。


「次に、この水晶に手を乗せてくれ」


言われた通りに手を乗せると、水晶が青色に輝いた。


「これは何をしているのですか?」


「知らないのかい?これは犯罪歴を確認する魔法道具さ。青色なら問題ないから、気にしなくていいよ」


そんな便利なものがあるのか。この世界は平和そうだな。


「手続きはこれで完了だ。後は注意事項の説明をするよ。10日以内に銅貨3枚か身分証を持ってここに来る事。もし来なければペナルティがあるから気をつけるんだよ」


「はい、ありがとうございました」


とりあえず街に入ることには成功した。次はお金を手に入れるのが最優先だな。


「すみません、ホーンラビットを売りたいのですが買い取ってくれる場所はわかりますか?」


適当に通りがかった人に質問してみた。


「ん?ホーンラビットなら冒険者ギルドで売ればいいだろ。ギルドの場所がわからないのか?この通りを真っ直ぐ進んで突き当たりで右に行けばわかるだろう」


「ありがとうございます!」


ざっくりした説明だったが言われた通りに向かってみる。


「ゴブリン討伐の依頼金の銅貨15枚です」

「それでよぉ、俺は言ってやったのさ。ここを通りたければ俺を倒してからだってな」

「おいおい聞いたか?赤爪のベッジが盗賊団にやられたんだってよ」


周りの建物に比べて異様に賑わっている建物があった。おそらくここが冒険者ギルドだろう。


勝手が分からないが受付っぽい場所に行ってみよう。


「あの〜、ホーンラビットを買い取って欲しいんですが、ここで買取できますか?」


「はい、できますよ。まずはギルドカードの提示をお願いします」


おっと、買い取りにもギルドカードが必要なのか。


「すみません、冒険者登録って無料で出来ますか?」


「あっすみません、冒険者の方ではなかったんですね。冒険者登録は無料で出来ますので、この書類に必要事項を記入してください」


名前とレベルのみ記入して紙を受付に渡した。必要事項少ないな。


「ウメ・ハナダさんですね。レベルは4ですか。問題はありませんね。では、ギルドカードの発行中にギルドの説明を行いますね」


「はい、お願いします」


この世界の情報をほとんど何も持ってない俺には貴重な情報だな。しっかりと集中して聞くことにしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る