屠畜場夜勤が書くSSホラー

ツクヨミ3

『特異事案資料』


・捜査資料名: 特異事案に伴う車両押収物解析

・発生日時(推定): 令和○年○月○日 23時45分頃

・発生場所(推定): ○○県○○市郊外、県道○○号線付近

・記録媒体: 押収車両搭載ドライブレコーダー(SDカード)

・搭乗者: 男性A(運転者、27歳)、女性B(助手席、25歳)



1. ドライブレコーダー音声記録


男性A

「よし、じゃあ帰るか。」


女性B

「うん!コンビニありがとう。限定スイーツ、買えてよかったー。これ絶対美味しい。」


男性A

「うわぁ、ここら辺、やっぱ真っ暗だな。」


女性B

「あ、見て。あれじゃない?あの森。」


男性A

「ああ、そうそう。ポツンとあるやつ。あそこだけ田んぼにできなかったんだよな。祠のせいで。」


女性B

「移動しようとすると、祟りがあるとかいう話だよね。ちょっと通ってみる?そこのあぜ道。」


男性A

「お、怖いもの見たさ?じゃあ、ちょっとだけな。」


女性B

「うわ、なんかすごい近い。森の木が全部こっち見てるみたい。」


男性A

「気のせいだろ。でも、確かに空気が重い感じするわ。」


女性B

「ねえ、なんかゾクゾクする。普通の道に戻ろうよ、気持ち悪い。」


男性A

「了解。もう少しの辛抱な。」


男性A

「はい、これで安心。普通の舗装された道だ。」


女性B

「ふぅ、助かった...。」


女性B

「ねぇ、なんか空が赤くない?」


男性A

「え?あー、確かに。街灯の光じゃないか?」


女性B

「でも、もっと全体的に…。なんか変な色だよ。」


男性A

「あー、間に合わなかった。」


男性A

「は?この信号、ボタン式じゃん。誰もいないのに、なんで赤なの。」


女性B

「ねぇ!さっきより赤くなってない?」


男性A

「え?...マジ赤いじゃん。空が真っ赤だぞ!?」


女性B

「キャー!なにこれ!どうしたの!!」


男性A

「嘘だろ、なんだよ!落ち着けって!!」


女性B

「赤い!赤い!赤いって!助け**********」


男性A

「*******************」


機械音

(※エンジン停止音)


音声ノイズ

(※ドライブレコーダー録画停止直前のノイズ)


無音

(※録画停止)



2. 事後捜査状況


車両発見: 記録停止後、当該車両は現場から約50キロメートル離れた山間部の林道にて発見された。車両に損傷はなく、施錠されていた。


搭乗者の状況: 発見時、車内は無人であり、所持品は車内に残されていた。現在に至るまで、男性Aおよび女性Bの消息は不明である。


映像解析結果:ドライブレコーダーの映像データのうち、23時49分以降の記録は、画面全体が異常な「真っ赤」な色彩で占められており、外部環境や車内の状況把握は技術的に不可能である。

この「真っ赤」な色彩が、記録されている「空が赤い」という音声証言と関連性があるかは不明。


結論: 記録された音声は、行方不明となる直前の異常な状況と、搭乗者の極度のパニック状態を示している。

ドライブレコーダーの記録は、突如途絶えており、車両が発見された場所と記録場所との間に、50キロメートルの隔たりがあることから、何らかの特異な事象が発生した可能性が高い。現在、事件と事故の両面から捜査を継続中。

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