It is test sentence.
人生楽しみたい
あなたのその、胸、の、なあああああああかあああああああああああ
とある館にて
原作;スティーブン・キング(嘘)
プロローグ とある手紙
大通りはもう夕焼けだった。太陽が地平線の彼方へと沈んでいっている。空はもう一部分が暗くなっていた。
様々な人々がいた。散歩をしている者、タバコをフーッとなんとも美味しそうに吸っている者、そして仕事帰りと思われる者。なんだかこの大通りに蔓延る人たちを観察しているだけで、丸一日が潰れると思えた。
くたびれた体を引きずって私は歩いていた時だった。
カーン カーン
大聖堂の鐘が鳴った。見ると、鐘が太陽の光を反射しさらに金色に輝いていた。
カーン カーン
なぜなのだろうか。気持ちがどんどん沈んでいくのがわかった。
カーン カーン
私、ワトリー・ウェーチャーは普通の家庭に生まれ、普通に育ち、友人もそれなりにできた。そして、親から言われていた安定した収入の事務職につき、今はこうして変わらない日々をただ過ごす退屈な日常を送っている。
何がダメなのだろうと時々ふと思い出したように考えるが、結局答えは見つからず、時間を無駄にしてしまったと自分を責めてしまう。
たまに友人と一緒に酒を飲んでいる時にこのことを話そうかと思うが、場の雰囲気を壊してしまうかと思ってしまうのでなかなか言えない。
だが、一度だけ言ってみたことはあった。それは古くからの友人、ジョンズ・ウィリアムと私の2人で飲んでいる時だった。
「みんなそんなもんさ。気楽に生きようワトリー」
その言葉は今でも覚えている。
いつからか、彼との付き合いも途絶えてしまった。元気でいるだろうか。
そんなことを考えながら、歩いているといつの間にか自分の家の目の前に私はいた。
少し黄ばみがかかった白いタイルが敷き詰められている壁、シダが垂れている屋根、そして庭のあちこちに生えているフランスゴム。まさしく我が家以外の何物でもない。
ガチャ。玄関に入りかけた時横に赤い郵便受けがチラッと見えた。
そういえば最近郵便受けを確認していなかったなと思い、手を無造作に突っ込んでみた。
大量の紙が中に入っているのがわかった。私はそれら全てをなけなしの握力でグッと一つにまとめ、外に出してみた。
玄関口で確認するのは少し気が引けたので、家に入った。
入った瞬間、暖かかい空気が私にまとわりついた。暖炉のパチ、パチという音が私を歓迎しているかのようだった。
私は紙どもをテーブルの上に置き、考えた。
まずはアイスティーが飲みたい。今は冬の十二月だが、関係ない。
井戸から汲んだ水をガスコンロに仕掛ける。
やがて、水が沸騰して熱い熱湯になったところで、こだわりぬいたアールグレイの茶葉をティーポットに入れ、沸騰した熱湯を半量ほど入れた。こうすると、とても美味しくなる。
今度は蒸らしの時間だ。一分から三分ほどかけてじっくりと紅茶を深く抽出する。
ここからが本番だ。
私はすぐさま外に駆け出し、ノコギリを手に取り、池のよく凍った氷をギコギコと切り始めた。
なぜ、あらかじめやっておかなかったのかふと思ったが、振り払い、氷を切り続けた。
すると、ティーポット八割ほどを占めるほどの氷が見事に切れた。
手が死ぬほど冷たいが、これも美味しいアイスティーのためだと思えばなんとか乗り切ってみせた。
そして、グラスに氷を入れ、濃厚に抽出したホットティーを慎重に注いだ。
ツー
まだ三割だ。
ツー
あと半分ほどだ。
ツー
……できた。なんとか氷の入ったグラスに紅茶を入れられた。
あとはかき混ぜるだけだ。持っている金属製のスプーンを手にゆっくりとかき混ぜていく。
完全に混ざりきったので、グラスを手に持ちテーブルへ向かった。そしてそのまま口に運んだ。
途端にアールグレイの芳醇な香りが鼻を突き抜け、あっさりとした味わいが舌を包み込んだ。
今まで作った中で最高傑作ではないだろうかと思えるほど美味しかった。とても美味だった。
堪能している間何気なくテーブルを見てみると、さっき置いてアイスティー作りで忘れ去られていた紙があった。
見た感じ十五枚ほどある。いちいち確認するのは面倒くさいと思ったので、パラパラと適当に見ていっているとある一枚の紙に引っ掛かりを覚えた。
「親愛なるワトリーへ」
一枚の封筒にはそう書かれていた。私はアイスティーを飲みながら封筒をビリビリと片手で破り、中身の白い手紙を取り出した。
手紙はこのような内容だった。
いかがお過ごしでしょうか。ジョンズ・ウィリアムです。あなた、ワトリーという人間と良き友人になれたことを今でも誇りに思っています。
さて、本題に入ります。ですが、これ以上読んでしまうともう普通の生活には戻れなくなるかもしれないほどのショックを受ける可能性があります。
まあ、こう警告してもあなたなら読んでしまうんでしょうけれどもね。
この度、私はオレロン島の西の海が見える所に立派な館があることを知り、いてもたってもいられなくなり、買いました。
執事も十人ほど雇い、充実した暮らしを送っていた所でした。
白骨が見つかったのです。
三階の隅の部屋の誰も使っていない寝室に、埃が溜まっているかと思った一人の執事が掃除しようとした時のことだったようです。
殺人事件が起きたのか、自殺だったのかはわかりません。ですが、このままでは気持ちが落ち着きません。
なので、白骨の謎を解明するために館に来て欲しいのです。
日時は一二月二十日、午後一時に私の館に来てください。
おそらく、フランスから直通で来れる汽車があると思います。
無理なようでも、行けたとしても、手紙を書いて私の執事、ルチャード宛に送ってください。彼が白骨を見つけた者です。
あなたと、他九人をお呼びいたしました。皆、私の友人です。ぜひ仲良くしてやってください。
では。
ジョンズ・ウィリアム
アイスティーは全部飲み干した。美味しかったが手紙の内容でいつもより味が薄かった気もする。
私は、しばらくの間手紙を見つめたまま動けなかった。
ジョンズ・ウィリアム。楽天的で気さくな彼がわざわざこの手紙を送るとは。
彼は冗談好きだった。どんなに辛い目にあっても、冗談めかして場を和ますほどだった。……しかし、この文面は恐ろしいほど丁寧に書かれている。むしろ、その整った文字と妙に礼儀正しい言葉遣いが、返って不気味に思えた。
飲み干したアイスティーをテーブルに置いた。そして、私は椅子を背にもたれたまま、ふと暖炉に目を向けた。オレンジ色の火が小さく揺れている。なぜだろう。今まで何をしても埋まらなかった胸の空洞が、ほんのわずかに熱を帯びていた。
「──行くしかないか」
思わず口に出していた。
しかし、十二月二十日まではあと一週間もない。
オレロン島までは汽車で行ける……はずだが、果たして切符は取れるのか。服装は?鞄の中には何を詰めるべきか?そもそも、本当に行く意味などあるのだろうか?
頭の中で自分に対する反論が巻き起こった。それでも私は、ある種の「引力」を無視できなかった。
──白骨。
ただの二文字が、私の頭からこびりついて離れない。私の空虚でつまらない日常がこの「白骨」により打ち砕かれていく気がしてならなかった。
私は立ち上がりまだ氷の冷たさが残っている手でウィリアムからの手紙をもう一度丁寧に折り畳んだ。
そして、引き出しを開けペンを手に取った。
「執事ルチャード様」
ジョンズ・ウィリアム様よりお手紙を拝見いたしました。
突然の内容にこちらも驚いておりますが、十二月二十日に館へ参ります。
何卒よろしくお願いいたします。
敬具
ワトリー・ウェーチャー
私は手紙を書き終わるとほっと一息つき、シャワーを浴びて寝た。
そして、手紙を翌日の朝投函した。
***
数日後、私は鞄に最低限の食事と切符を持って家を出た。
ドアを開けた途端、冷たい風が容赦なく私に打ちつけた。季節風があったとしても、やはり真冬は寒い。
太陽はまだ昇ってはいなく、空が薄暗い。
大通りには人っこ一人いなかった。それどころか、鳥や犬でさえも鳴かないなんとも不思議な空間になっていて、ここには私一人しかいないとでも思えた。
十分ほど歩くと、オレロン島行きへの駅に着いた。
駅の奥へ目を向けると、汽笛を軽快に鳴らす汽車の姿が見えた。
It is test sentence. 人生楽しみたい @191945450721kimoti
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