8:【燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや】
読み:えんじゃく いずくんぞ こうこくの こころざしを しらんや
意味:つまらない人物には偉大な人物の考えは理解できない
見栄え:★★★★★(漢文特有の言い回しが長さと相まって高尚な印象)
残念度:★★★★☆(とりわけ由来が残念。知ると僻みに聞こえだす)
ギャップ:★★☆☆☆(字面から意味がとりやすいためギャップは小さい)
解説:
前回、読みの短い故事成語を取り上げたので、今回は逆に筆者が思いつく限りの長い故事成語を取り上げることとする。
【燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや】
かなと漢字を混ぜて15文字。読みは24音である。
長い。五七五よりも長い。そしてやたらと小難しい。
しかしながら漢文の教材にて”安くんぞ~んや”の例題として用いられがちなため知名度はそこそこ高い気がする。
【燕雀】はツバメや雀などの小鳥(のようなつまらない人物)。
【安くんぞ~んや】は反語を表わし、~なわけがない。
【鴻鵠】はオオトリやクグイといった大きな鳥(のように偉大な人物)。
【志を知る】は、まあそのままの意味である。
以上を繋げて”つまらない人物には偉大な人物の考えてることを理解できるわけがない”という意味である。
さて、この語句もまた故事成語ということで、当然元となった故事が存在するので紹介しよう。
秦が中国を支配していた時代、とある農家の男が仲間たちに大望を語ったところ、お前(あるいは俺たち)みたいな庶民にできるわけないだろうと笑われた。
そこで男が言い放った台詞が【燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや】である。
まあ言ってしまえば僻みである。
乱暴に意訳するなら「俺をお前らと一緒にするな。俺はこんな所で終わる男じゃないんだよ」といったところか。
上京して一山当てたいミュージシャンのようなノリを感じる。
字面からは第三者が中立的な立場で評価を下しているような高尚な印象を受けるが、実際はただの主観にすぎないと言う点で残念度が高い。
とはいえこの男、なんとのちに反乱軍を率いて一時的にではあるが一国の王となり歴史にその名を刻んだ人物である。
さすがに秦の打倒までは叶わなかったものの、周囲の人たちよりはるかに大きな志と実力を秘めていたのは間違いない。
彼もまた蟷螂之斧のカマキリのように挑戦を成した人物である。
彼の周囲の人間はカマキリを嘲笑った御者と同類といえるだろう。
残念ながらこの男の周囲にはカマキリを称えた車の主のような偉大な人物がいなかったのかもしれない。
挑戦者を嘲笑うのは簡単だが、嘲笑われるような挑戦をするのは難しい。
せめて車の主のように、その挑戦を敬意をもって称えられるようになりたいものである。
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