【短編怪談】東都テレビ 企画資料
久保
東都テレビ 企画資料
※場所や個人が特定されうる箇所は、全て▓▓▓▓といった形で伏字にしています。
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《 東都テレビ 『絶叫!心霊バラエティ ナイトメア劇場』
「怪異直撃取材班」 コーナー 2023年5月6日分 企画書 担当AD:▓▓▓▓ 》
コーナー概要:
『絶叫!心霊バラエティ ナイトメア劇場』の大人気コーナー「怪異直撃取材班」では、全国から寄せられる「恐怖スポット情報」をもとに、出演者たちが体当たりで噂の現場へ取材・検証!
果たして恐怖の真相は“ただの勘違い”なのか、それとも"本物の怪異"なのか──。
企画名:
『百の顔が見ている――放送室の仮面の謎』
企画概要:
▓▓県▓▓市にある▓▓▓小学校の放送室には、何と100を超える数の"仮面"が壁一面に飾られている。
仮面といっても、能面や天狗面といった伝統的なお面から、縁日で売られているようなキャラクターものの仮面まで、その種類は様々。
その放送室の壁一面に飾られた仮面は、まるで百の視線に睨まれているかのような異様さを放っている。
これらの仮面たちは、一体誰の手により?何のために?並べられたのか。その謎に、迫っていく───。
※ADとしての初仕事を、大好きだったこの番組で担うことができ、本当に嬉しいです!!!全力を尽くします!!
※以下、取材時のメモ
【インタビュー① ▓▓小学校3年A組 ▓▓▓▓くん】
テレビの取材?すげー!俺、▓▓▓▓っていいます。▓小のことなら、けっこう知ってるよ!
放送室のお面はね、俺が1年のときからあったよ。いっぱいあるんだ。100こくらい?もっと?壁にべたべたはってあってさ。みんなは怖いって言うけど、俺はあんま怖くない。変な顔だし。なんでお面がはってあるかは知らないー。きっと誰かを怖がらせるためにやったんだよ。
他にあった変なこと?…えーとねー。なんかあったかな。…あ、そうだ、この前ね、給食のときの放送で、変なのが流れたよ。
『ごめんくださーい。おにわいきませーん。』って。うん。こんな感じだよ。『ごめんくださーい。おにわいきませーん。』
子供の声みたい。男の子の声なのかな…?よくわからなかった。▓▓先生がすぐにスイッチ切っちゃったし。みんな“なんだー”って笑ってた。いつだったかな…2年生のとき?…うーん、やっぱ1年生のときかな。忘れちゃった。
【インタビュー② ▓▓▓小学校3年A組担任 ▓▓▓▓先生】
あ、よろしくお願いします。3年A組の担任をしております、▓▓▓▓と申します。
…放送室の仮面の件、ですよね。あれ、ちょっと不気味だなって私も前から思ってたんです…。私3年前にこの学校に赴任してきたんですけど、その時からあれはもうありました。最初見たとき、ほんとにびっくりしましたよ。最近ここでお化け屋敷でもやったのかなって思いました、最初は。
他の先生にも聞いてみたんですけど、どの先生も自分が赴任した時にはあったってことで、経緯はよく分からないんです。ごめんなさい。一番長いのは、教頭先生だと思います。でも、教頭先生も詳しく教えてくださらなかったんですよね…。だから、もうあまり触れないようにはしていて。
あ、校内放送の件も聞かれたんですね。…あれもちょっと気持ち悪くて。通常、給食時の校内放送は、児童たちから好きな曲を募って、その曲のCDをかけてるんです。なんですけど、ごくたまに、全然関係ない音声が流れるんです。…あぁ、そうです。『御免下さーい。お庭行きませーん。』みたいな。よくわからないですよね。何を言っているのかははっきり聞き取れないんですけど。これが、ちょっと舌足らずな、男の子、のような声なんです。いつも。これまで私は4回くらい聞きました。1年に1回くらいのタイミングであるんです。直近は、たしか去年の11月頃ですね。しかも…これ昔からずっと続いているらしいんです。もう他の先生たちは慣れたみたいなんですけど。でも、誰のCDにも入ってないんですよ?やっぱりおかしいですよね。気持ち悪いので、いつもその時はスイッチを切るようにしてます。…児童たちからは不満が上がりますけどね。…なんか嫌なんですよね、あの声を聞くのが。
…すみません、全然違う話になっちゃいましたね。でも、何となく無関係ではないような気がしてるんです。私は霊感とか全くないので分からないんですが、放送室には何かあるんですかね。
…あ、そうだ。1個思い出したことがあります。今年の2月の節分の時期に、節分のイベントで使った鬼のお面を、ちょうどよかったので放送室にそのまま飾ろうとしたんです。そしたら、教頭先生から「勝手なことをするな」ってすごく怒られたんです。ちょっとかなりびっくりしました。かなり慌てていたようだったので。あんな取り乱す教頭先生、初めて見ました。
…こんな感じで大丈夫ですか?…ありがとうございます。…うーん…。その声を聞くのは、やめた方がいいんじゃないですかね…。あ、いえ。何となくです。すみません。取材、頑張ってくださいね。どんな仕上がりになるか、楽しみにしてます。
【インタビュー③ ▓▓▓小学校教頭 ▓▓▓▓先生】
…その件については、昔からの"伝統"と聞いており、詳しいことは私も存じ上げません。はい。詳しい経緯は分かりません。
校内放送の件ですか。…それは誰かのいたずらでしょう。ええ。聞いたことはありますよ、何度か。…詳しいことは分かりませんが、何か流行ってるんでしょう。よくあるじゃないですか、子どもたちが、世代を超えても同じ遊びをする、みたいなものです。…あぁ、その件ですか。…その件は…まぁあれです、あのお面は埃をかぶりやすいですし、傷むといけませんから、あまり勝手に触らないでください、と伝えたまでです。そこまで深い意味はありませんよ。
私から言えるのはこれくらいです。お越しいただいたところ申し訳ないが、大げさにしても、面白いものにはならないと思いますよ、ええ。
【インタビュー④ ▓▓▓小学校元教諭 ▓▓▓▓氏】
…取材って何のことかと、最初びっくりしましたよ。…あの放送室の件ですか…。よく、僕なんかのところまで辿りつきましたね。どこまで言っていいのかな…。これ、僕が言ったって絶対に出ませんよね?全然確証がないこともお話しますので。もうすぐ定年を迎えるおじさんの戯言です。上手く編集でお願いしますよ。
まず、僕が▓▓▓小学校に勤めていたのは…今から30年くらい前になりますか。最初の小学校で5年勤めて、そこから2つ目の学校でしたね。
…放送室のお面は、実はその頃からあったんです。そうなんですよ。ほんとに今もあるんですか?…え、見たいです。…うわぁ。ほんとだ。懐かしいな…。でもまた随分と増えましたね。昔はもう能面とかばっかで、本当に不気味でしたよ。誰も放送室なんて入りたがらなかったです。可愛らしいお面も増えてますが…。これはこれで不気味ですね。これね、僕が赴任した2,3年前くらいから飾られるようになったみたいなんです。
あ、で、その理由ですよね?これは確証は全くないので、くれぐれも鵜呑みにしないでくださいよ。…当時の同期の教員から、こんな話を聞いたんです。実はあの放送室、お面だけじゃないんですよ。実は….え.…そうです。校内放送です。なんだ、知ってたんですね。….え、今もまだ流れてるんですか?…あの子供の声が….?…すみません、ちょっと鳥肌立っちゃいました。僕聞いたの30年前ですよ、だって。普通じゃないですよ。…すみません、話を戻しますね。今から32,3年前ですね。あの校内放送が一番最初に流れたときです。当然、おかしいってなるじゃないですか。慌てて先生たちが放送室に駆け付けたら、当時放送部だった男の子が……顔の皮を剝がされた状態で、血まみれで倒れてたみたいなんです。もちろん、亡くなってたみたいです。なんですが、学校側は、それを…隠蔽したんです。当時の校長が。「こんな事故が起きたことが知られたら、評判が地に落ちる」と。なので、その児童は、行方不明ということになりました。…ありえない話ですよね。でも、話はまだ終わらないんです。そこからしばらくして、給食の時間にまたあの校内放送が流れたみたいなんです。再び放送室に行くと…今度は、別の児童が、まったく同じように、顔の皮を剝がされて、亡くなっていたみたいなんです。…あくまでも噂ですからね。これそのまま使わないでくださいよ。で、放送室にお面が飾られるようになったのはそこから、っていうんです。そこから、あの声が流れる度に、放送室のお面が1個ずつ無くなっていくみたいなんです。なので、あのお面は、いわば"身代わり"みたいなものらしいです。絶対にあのお面は絶やしてはいけない。もしあのお面がなくなってしまったら…考えるだけでもおぞましいですね。という、あの学校に伝わる怪談です。
…はい。あ、▓▓先生ですか?あの人、教頭になったんだ…。ええ、僕が赴任した時からいらっしゃいましたよ。元気そうでしたか?…良かったです。▓▓先生なら色々詳しく知ってそうですけどね。…あ、そうなんですか…。その反応は…何というか、ちょっと不思議ですね。それで、何か気になることが?…あ、なるほど。確かに、それは避けた方がいいかもしれないですね。▓▓先生が怒ったのもそういう理由でしょう。え?だって、あの声ってそういう意味じゃないですか。
…あれ、皆さんどんな風に聞こえてるって言ってました?
【国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース】
1933年 ▓▓県
『於三という、尾が三つに分かれた知恵のある狐がいた。ある晩、役者が歩いていると、於三が現れいろいろなものに化けてみせた。役者は於三をだまして袋の中に入れ、口をしばって海に捨ててしまった。』
類似事例
『夕方歩いていると、於三という狐がいた。そこで鬼面とお多福の面をかぶって驚かせたら、於三はびっくりしてお面を欲しがった。鬼面をあげたお礼に於三は化け方を教えた。その後於三は鬼の面を口にくわえているところを侍に斬られて死んだ。』
『ある時、能師が於三という狐に会った。能師はいろいろな面をかぶって変化してみせて於三を驚かせた。於三がせがむので能師は鬼の面をひとつあげた。後に於三は鬼の面をかぶっているところを猟師に撃たれて死んだ。』
ごめんくださーい。おにわいきませーん。
…
おめんくださーい。おにはいりませーん。
…
お面ください。鬼は要りません。
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本企画は制作段階まで進行していたものの、担当AD・▓▓▓▓の突然の退職により、お蔵入りとなった。
なお、現在東都テレビオフィス 5F 執務室スペースの壁には十数のお面が飾られているが、その由来について公式な説明は存在しない。
【短編怪談】東都テレビ 企画資料 久保 @XrwZdm
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