いくらを題材にした一発ネタかと思いきや、不条理ホラーとして一気に引きずり込まれる短編。日常の会話から始まり、彼女の言葉と共に「いくら」が世界を侵食していく展開は、笑いと恐怖が紙一重で背筋を冷やす。ラストの「彼女なんていたっけ?」の一文まで、じわじわと狂気が浸透していく読後感が秀逸。