こんな世界じゃヒロインに不憫すぎる!
ゆーりあ。
プロローグ
十三歳の誕生日だった。
その日は何でもない平日で、もちろん私にとっては誕生日プレゼントをもらえる大切な日だったけれど、世間的にはただの平凡な一日に過ぎなかっただろう。
学園から帰ってきても父様も母様も仕事中のようで、退屈を紛らわせるみたいに今日の晩ご飯について思いを馳せていた。好物の数々が頭に浮かんでいた、その時だった。
ふと頭の奥で何かが弾けるようにして、記憶が蘇った。
――ああ、私、この世界を知ってる。いや、遊んだことがある。
確かに、教えられる前から名家の名前に聞き覚えを感じていた。けれどそれは、父様たちの会話をなんとなく耳にして覚えていたのだと、気にも留めたことはなかったのに。
薄曇りの空。外では鳥が一斉に鳴き、風に揺れる木々がざわざわと囁く。
窓から差し込む光は弱いけれど確かに温かくて、子ども時代の終わりを告げるみたいに感じられた。
そして同時に、私は思い出してしまったのだ。
ここは、あの悪名高き“バッドエンドだらけの乙女ゲーム”の世界。
そして、この世界のヒロイン――メロディ・レイン。
可愛くて、健気で、でもひたすら不憫に弄ばれる女の子。
……いやいやいや、待って!?
ゲームの中なら盛り上がるよ?血生臭い監禁ルートも、ぞくりとするヤンデレ展開も、正直プレイヤーとしては「ごちそうさま」だった。
でも現実としては?推しのヒロインがそんな目に遭うなんて、見ていられるわけがない!
そりゃ、ハッピーエンドだってあるけど……あんな地雷物件たちと結ばれて、本当に幸せになれる? 未来を思うと、どうしても首をかしげるしかない。最終的にバッドエンドと同じ結末にしかならない気しかしない。
「こんな世界じゃ、ヒロインが不憫すぎる……」
思わず声に出していた。
胸が熱くて、どこか痛くて、それでも決意ははっきりしていた。
私はモブキャラだ。舞台には上がらない。
でも、この子の未来を少しでも変えられるなら――私は、この世界でただの見物人ではいられない。
彼女が笑っていられるように。
彼女が幸せになれるように。
誰よりも愛しい“推しヒロイン”を、守り抜いてみせる。
もちろん、陰ながら、ね!
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