ジャムパン(仮)

@rbk3

ジャムパン(仮)

プラムを見ると思い出す、中学2年生の夏休みの話。


両親が海外出張に行くのに合わせて夏休みの2週間、田舎で暮らしている祖母の家に行くことになってしまった中学2年生の鹿川百ししかわ もも

大きな荷物を抱えて、慣れない電車に乗り込むことに成功した。


心地よいはずの揺れが音と共に襲ってくる。

ついでに元気すぎるくらいのセミの鳴き声。


「酔った。電車きらい」


ぐぇーっと項垂れていた身体を起こして呟くと人の居ない電車に吸い込まれていった。


「しょうがないでしょ。田舎行きの古いワンマン電車なんだから」


沙奈さな


反射的に大きな荷物を挟んで隣に座っている親友に目を向ける。

反応されると思わなかったのだ。


「なによ。そんな驚かれること言ってないけど」


驚かれたことが心外だったのか、読んでいた本を閉じて拗ねたような声をしている。


「ごめんって。それ、本読んでて酔わないの」


沙奈の抱えている本を指さす。

見てるだけで目が回ってもっと酔いそう。


ももみたいに弱くないから平気なの。遠くの山でも見といたらいいじゃない。乗り物酔いは遠くを見るのがいいって聞くし」


中学生にしては大人っぽい顔立ちをしている沙奈に言われると、姉なんていないはずなのに年の離れた姉に言われているように感じることがある。今みたいに。

クラスメイトや友達からも言われていた。


「あたしが弱いんじゃなくてこの電車が揺れすぎなだけ」

「早く降りたい…」


言われた通り遠くを見つめながら文句を垂れる。

あたしは独り言が多いタイプ。沙奈はそれに気まぐれに言葉を返してくれる。

ここ一年でさらに独り言が増えたような気さえする。あたしは一体誰と話しているんだろう。


「まだ時間かかるし、終点まで乗るんだから我慢よ。 あ、あのひまわり立派。きれい」


沙奈はきれいな花と動物が好きだ。

彼女はずっと変わっていない。


「田舎、とおいなぁ」


この独り言は隣で本を開き始めた親友には届かず、元気すぎる夏の太陽に照らされて電車の音と共に反響した。



「百、起きて。次の駅が終点よ」


いつの間に寝てしまっていたのだろう。

乗り物酔いの原因だったはずの電車の揺れに寝かしつけられていた。


「ん~、おはよ」


引ききっていない眠気に抗い、どうにか目を開ける。


「はい、おはよう。よく眠れたんじゃない?気持ちよさそうな寝顔してたわ」

「眠れた。電車ってこんなに寝れるんだ…」


本当に長時間ねていたらしく、日が傾きはじめていた。

寝たことで酔いがましになり、ようやく乗っている電車を見渡す。

つり革も手すりも、すべて昔から使われていそうな年季の入ったものばかりだ。

これが最近流行りのレトロってやつか。


それにしてもこのイス、電車にしてはふかふかで長時間座るどころか寝ていても平気だったな、今更気が付いた。

昔ながらの電車とはそういうものなのか、ワンマン電車だからなのだろうか。

そもそも〈ワンマン電車〉すら数日前に初めて知った百が、ふかふかなイスに頭を悩ませているうちに目的地に近づいていたようで、ポツポツと民家らしきものが車窓越しに見えてきた。


「まもなく終点です。お忘れ物にお気を付けください。」


この運転士さんは駅名を言わないスタイルらしい。どうせ降りるからなんでもいいや。

あたしの目が覚めたことを確認してすぐに本を読み始めていた沙奈が頭を上げた。


「ふぅ、長かった。もう夕方ね」

「うん。暗くなる前におばあちゃんの家行かないと」

「ちゃんと家の場所はわかるの?」

「父さんからメモに地図書いてもらったよ」

「それでたどり着けるかしら…」

「沙奈がいるから大丈夫でしょ。あたし一人だったら迷ってたどり着けないけど」


不安そうな沙奈を横目に、小学生の頃から使っている小さめのショルダーバッグから丁寧に折りたたんであるメモ用紙を取り出す。

端が折れてくしゃくしゃになってるメモを見にくいなぁ…と思いながらいじっていると、目的の駅についたらしい。


「まもなく、終点に到着いたします。お出口は左側です。」


相変わらず駅名のないアナウンスが流れた。

ずり落ちていたショルダーバッグをかけなおし、お泊まりセットが入ったボストンバッグを手に持って立ち上がる。

沙奈も小学校の修学旅行に持ってきていた肩掛けのボストンバッグを膝に置き、リュックサックに本を押し込んでいた。


満を持してホームに出ると、暑い空気と共にさわっと山の風に吹かれる。夏の山って感じ

ギリギリ座っても大丈夫そうなボロいベンチと、無人の改札。

運賃は運転士に渡すらしい。これも父さんに教えてもらった。


「お金は運転士さんに渡すらしいよ。ここ無人駅だから」

「そうなんだ。無人駅初めて来た」

「うん。あたしも」


ホームに並んで突っ立っていると電車から運転士らしき人が降りてきてこちらに歩いてくる。


「あの人に渡すの?」

「たぶんね」


かけなおしたショルダーバッグから財布に挟んであったポチ袋をとりだす。

去年のお正月におばあちゃんがくれたお年玉の袋。洋風でかわいかったから普段から使ってる。


「終点まで長かったでしょう。お疲れ様」

「あっ、はい!ありがとうございます」


ポチ袋に夢中になっている間に近くまで来ていた運転士に声をかけられ、驚いて大きな返事をしてしまった。

運転士にしては若い印象だ。話しかけてくれて助かった。

びっくりしたけど。


「おお、いい返事。はい、それじゃあお金もらおうかな」

「えっと…これでお願いします」


ポチ袋の中身を取り出して値段を確認せずにそのまま渡す。


「うん。ちょうどです。ありがとう」

「すぐ暗くなるからね。山は危ないから、気を付けて。女の子1人なんて尚更」

「はい。ありがとうございます。」


沙奈と並んで会釈をして何のためにあるのかわからない改札を通る。

運転士の言葉に違和感を覚えていなかった。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


ここまで読んでくださりありがとうございます!

本当は限定公開にしたかったんですけど…やり方が分からず、一般公開になってしまっていると思うので、宜しければ下記の感想・アドバイスフォームにいろいろ送ってくださると幸いです!!


https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSe7wt0yoerSz32tP9MikNbjAVBT4pF2u-juhr2MslvsUouKrw/viewform?usp=header


これはしっかり機能しているのでしょうか…

分からない……


続きも書くつもりなのでまたいつの日か…!



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