つぶやき以上エッセイ未満

杉浦ささみ

カラオケボックスに泊まる

 旅先の夜の繁華街を歩いてると無性に宿代をケチりたくなってカラオケボックスに泊まることにした(普段ホテルなんかは予約する気が起きず、いつもネカフェとかを利用してる)。


 んで、地域最安価を謳ってる店に入ったんだけど、狭い階段を上がると受付があって、受付の向かいがバーみたいになってる変な間取りの店だった(酒瓶とか並んでる)。大分酔った姉ちゃんがスツールに座りながらadoのギラギラを熱唱してた。


「この店で寝るんか」と一瞬躊躇したけど考えてみれば、まあ寝るのは個室だし、耳栓と目隠しのタオルがあればなんとかなるだろとフリータイムを申し込んで部屋に案内してもらった。


 でも壁が薄すぎた、キツい。「DAMチャンネルをご覧の皆さん」的なのは設定で音量ゼロにできるけど、周囲の部屋から聞こえてくる歌声は、耳元で叫ばれてるようなデカさで発狂しそう。どんくらい音程ズレてるかも明瞭に聞き取れる。


 仕方ないからこっちも歌うことにした。少しでも元を取りたい。ピッチ早めのアニソンでストレスを吹き飛ばそうと思ったんだけど、Aメロあたりで自分のキモボが周囲にダダ漏れになってる現実に恥ずかしくなってきて、すぐ演奏終了押した。結局なんも歌いきれずにドリンクバーだけがぶ飲みして店を出た。地域最安価らしいけど大損だった(自分が悪い)。


 宿代はケチらないほうがいい。というかカラオケボックスは泊まる場所じゃない。でも旅行は楽しかった。

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