俺だけスキル無双な件~謎の美少女から授かったスキルツリーの力で成り上がって最強を目指す~
空花凪紗~永劫涅槃=虚空の先へ~
第1話 落ちこぼれハンター、封印を解く
ダンジョン。それは世界に突如現れた異界の穴。
中には異形の魔物が蠢き、宝と危険が眠る。ダンジョンは発生後1週間以内に攻略されないと、ダンジョンブレイクが起こり、中にいるモンスターたちが地上に溢れてしまう。人類はその脅威と共存するために、魔物を狩る者――ハンターを生み出した。
ハンターは覚醒の儀で「スキル」と「魔法」を授かり、己の道を切り拓く。
剣に秀でた者、炎を操る者、癒しを担う者。彼らはランクで格付けされ、SからFまで七段階に分けられている。
だが――。
「……ちくしょう、また外した!」
狭い洞窟で、青年は錆びた短剣を振るっていた。
名は佐々木涼。十八歳。Fランクの落ちこぼれハンターである。
彼の前には、ぷるんと震える青色のスライム。最弱とされる魔物だ。だが涼は額に汗を滲ませ、必死にその動きを追う。
――覚醒の時、何も授からなかった。
スキルも、魔法も、空っぽ。
ハンターでありながら「ただの人間」としてスタートした涼は、雑用同然のFランクダンジョンで日銭を稼ぐしかない。
「はあっ!」
渾身の突きでようやくスライムを仕留めると、魔石が地面に転がった。小銭ほどの価値しかないそれを拾い上げる。
「……今日も赤字か」
ため息をついた、その時だった。
――ひび割れた岩壁の奥から、かすかな風が吹いた。
涼は気付く。ダンジョンに不自然な隙間がある。それは永年の風化によって朽ちた岩壁に出来た、通路であった。
「……隠し通路?」
好奇心に突き動かされ、彼は狭間に身体を押し込む。
やがて開けた空間に出た。そこは静謐な聖堂のような部屋だった。
中央には、白い光に包まれた結晶。
その中で――白髪の少女が眠っていた。
ボブカットの髪は雪のように透き通り、瞳は閉じているが、まぶたの下には碧色の輝きが覗く。
まるで氷像の姫。
「……な、なんだよ、これ」
涼が近づいた瞬間、結晶に走る封印の鎖が砕け散る。
少女はゆっくりと目を開けた。
「……目覚めの時か」
鈴のような声が、虚空に響く。
涼は思わず身構えた。だが彼女はただ涼を見つめ、微笑んだ。
「名もなき狩人よ。汝、力を欲するか?」
唐突な問い。だが胸の奥に秘めた渇望が、言葉を突き破った。
「ああ……俺は強くなりたい!」
少女は満足げに頷く。
その瞬間、涼の視界に奇妙な光景が広がった。
無数の枝が広がる――巨大な樹の図。
根から幹へ、幹から枝へ。スキルの名が枝葉のように輝いていた。
「これは……?」
少女は告げる。
「これは《スキルツリー》。選び、育て、あなたの道を築く力。私との契約の証、そして、あなたに秘められし全能の力だ」
涼は震える手を伸ばした。
落ちこぼれに訪れた、たった一つのチャンス。
「俺は……この力を掴む!」
こうして、Fランクの落ちこぼれ佐々木涼の下剋上、成り上がりの物語が始まる。
◇
――光に包まれる。
意識が戻ると、涼の目の前に青白いパネルが浮かんでいた。
「な、なんだ……これ」
まるでゲームのステータス画面のように、涼の名前や能力が整然と並んでいる。
【名 前】佐々木涼
【種 族】ヒト
【性 別】オス
【年 齢】18歳
【職 業】なし
【レベル】10(上限)解放条件:レベル格上の魔物の討伐
【体 力】30/30
【魔 力】30/30
【攻撃力】10
【防御力】10
【知 力】10
【精神力】10
【俊敏性】10
【幸 運】10
《スキル》
なし
《魔法》
なし
《その他》
ツリーポイント 30p
【生命の樹】(未解放:解放1p)
【技能の樹】(未解放:解放1p)
【知恵の樹】(未解放:解放1p)
「……これ、俺の……能力……?」
唖然とする涼に、白髪碧眼の少女が一歩踏み出す。
彼女の瞳は月のように澄み、どこか神秘を帯びていた。
「そう。それは契約の証。あなたの魂を写しとった《樹の書》だ」
「《樹の書》……?」
「ステータスとも言う。世界は枝分かれする運命を持つ。力を選び、伸ばすのもまたあなたの意思。見よ――そこに三つの樹がある」
涼の視界に「生命の樹」「技能の樹」「知恵の樹」と表示されたラインが浮かぶ。
それぞれが未解放で、横に「1p」と記されている。
「ツリーポイントを捧げれば、一本の樹を芽吹かせられる。生命は肉体の強靭、技能は武器と技の研鑽、知恵は魔法と叡智の覚醒に通じる」
「……つまり、俺がどう成長するか、一つをここで選べってことか」
「いいえ、あなたには全ての樹への道がある。枝選びはあなたの道を定める。慎重に、だが恐れるな」
涼はゴクリと唾を飲み込む。
これまで「スキルなし」「魔法なし」と馬鹿にされ続けてきた落ちこぼれに、ようやく訪れた選択の時。
――俺が、どんな道を歩くのか。
ステータスに刻まれた「30p」の文字が、じわじわと心を熱くしていく。
「……よし。俺は――」
そして、俺は30ポイントのツリーポイントを割り振ることにした。
◇
《スキル》
なし
《魔法》
なし
《その他》
ツリーポイント 30p
【生命の樹】(未解放:解放1p)
【技能の樹】(未解放:解放1p)
【知恵の樹】(未解放:解放1p)
俺は興味本位に【知恵の樹】をタップした。
『ツリーポイント1を消費して魔法を司る【知恵の樹】を解放しますか? はい/いいえ』
「これは?」
「知恵の樹。魔法を司る枝である」
魔法を司るって響きなんだそれ。面白そうじゃないか! だが、こんなの聞いたことがない。まぁ、解放しないと何も始まらなさそうだしな。
ということで俺は喜々として「はい」を選んだ。
ツリーポイント29p
【知恵の樹】
1火(未解放︙解放1p)
1水(未解放︙解放1p)
1木(未解放︙解放1p)
1土(未解放︙解放1p)
1雷(未解放︙解放1p)
1闇(未解放︙解放1p)
1光(未解放︙解放1p)
1異常(未解放︙解放1p)
1その他(未解放︙解放1p)
「おお! なんだなんだ!」
俺は思わず声を上げる。ゲームでたまにあるスキルツリーのように枝分かれしているそれは、男心をくすぐるものだった。
待て。ここは慎重にいかねばならない。ひとまず他の樹も見てみるか。
ツリーポイント29p
【生命の樹】(未解放︙解放1p)
【技能の樹】(未解放︙解放1p)
【知恵の樹】(解放済み)
『ツリーポイント1を消費してステータスを司る【生命の樹】を解放しますか? はい/いいえ』
ステータスを司る……か。とりあえず今は「いいえ」で。
『ツリーポイント1を消費してスキルを司る【技能の樹】を解放しますか? はい/いいえ』
スキル……。武器スキルとかなのか? とりあえずこれも今はパスで。
ツリーポイント29p
【知恵の樹】
1火(未解放︙解放1p)
1水(未解放︙解放1p)
1木(未解放︙解放1p)
1土(未解放︙解放1p)
1雷(未解放︙解放1p)
1闇(未解放︙解放1p)
1光(未解放︙解放1p)
1異常(未解放︙解放1p)
1その他(未解放︙解放1p)
俺は【知恵の樹】とにらめっこする。レベル的にツリーポイントはレベルが一つ上がると3ポイント得られると推測できる。レベルについても知りたいが、ここは先ずはスキルツリーだ。
「あるとしたら「その他」かな……」
『ツリーポイント1を消費して【知恵の樹】の「その他」を解放しますか? はい/いいえ』
「はい」
ツリーポイント19p
【知恵の樹】
1その他
2空間把握(未解放︙解放2p)
2時間把握(未解放︙解放2p)
2鑑定Ⅰ(名前と種族)(未解放︙解放2p)
2隠蔽Ⅰ(名前と種族)(未解放︙解放2p)
2武器付与Ⅰ(未解放︙解放2p)
2防具付与Ⅰ(未解放︙解放2p)
やはりあった! 俺は迷わず「鑑定」を選んだ。
『ツリーポイント2を消費して【知恵の樹】の「鑑定Ⅰ」(効果︙モンスターやハンターの名前と種族を見破る)を解放しますか? はい/いいえ』
今度はツリーポイント2もいるのか。でも致し方ない。俺は「はい」を選んだ。
2鑑定Ⅰ(名前と種族)
3鑑定Ⅱ(性別と年齢)(未解放︙解放3p)
俺は鑑定を解放できるまで解放した。
4鑑定Ⅳ(職業とレベル)
5鑑定Ⅴ(力と魔力)
6鑑定Ⅵ(素質値)
7鑑定Ⅶ(魔法とスキルとその他)
8全鑑定(隠蔽をも見破る最高位の鑑定)(未解放︙解放8p)
ツリーポイント1p
くそ。全鑑定まで届かない。だが、隠蔽なんて持ってるやつそうそういないだろうから、今はいいか。それより鑑定はほとんど解放した。残りツリーポイントは1p。
鑑定はどうしても手に入れたかったが、最初から極振りしすぎたか?
「なぁ、君の名前は?」
俺は白髪ボブの美少女に聞く。
「私の名はヘレーネ。ただのヘレーネ」
「俺は佐々木涼。よろしく」
「ええ、よろしく」
「一つ聞きたいんだけど」
「何?」
「レベル上限って何? レベル10なんだけどさ、これ以上上がらないの?」
「レベル10毎に上限と解放条件がある。あなたの場合、レベル格上のモンスターの討伐。経験値は蓄積されているから、あなたならそのレベルキャップを超えれば、次のレベルキャップ20まで上がると思うわ」
「そうなのか! レベルもステータスも今まで聞いたことないけど、もしかして急に成長するハンターがいたり、俺みたいな落ちこぼれのハンターがいたりするのはそのせい?」
「そうよ。それにしても攻撃魔法は解放しなかったのかしら」
「鑑定に全部振り込んだらツリーポイントが1pになっちゃってね」
「なら最初だけ特別に」
『 【神子からの祝福】ツリーポイント1を消費して【知恵の樹】の「雷」及び魔法「ライトニング」を解放しますか? はい/いいえ』
「いいのか?」
「いいのよ。あなたへの祝福よ」
俺は迷わずライトニングを解放した。
ツリーポイント0p
【知恵の樹】
1火(未解放︙解放1p)
1水(未解放︙解放1p)
1木(未解放︙解放1p)
1土(未解放︙解放1p)
1雷
2ライトニング
3ライトニングスフィア(未解放︙解放3p)
1闇(未解放︙解放1p)
1光(未解放︙解放1p)
1異常(未解放︙解放1p)
1その他
2空間把握(未解放︙解放2p)
2時間把握(未解放︙解放2p)
2鑑定Ⅰ(名前と種族)(未解放︙解放2p)
2鑑定Ⅰ(名前と種族)
3鑑定Ⅱ(性別と年齢)
4鑑定Ⅳ(職業とレベル)
5鑑定Ⅴ(力と魔力)
6鑑定Ⅵ(素質値)
7鑑定Ⅶ(魔法とスキルとその他)
8全鑑定(隠蔽をも見破る最高位の鑑定)(未解放︙解放8p)
2武器付与Ⅰ(未解放︙解放2p)
2防具付与Ⅰ(未解放︙解放2p)
俺は人生で初めて魔法『ライトニング』を手に入れることが出来た。
「ありがとう。じゃあ後は格上のモンスターを倒すだけか」
「ええ。Eランクダンジョンに行きなさい」
「ああ!」
俺はレベル上限とその解放条件を知った。
俺はスキルツリーというチート能力を得た。
鑑定に雷魔法を得た。
「決めた。俺、最強になろう!」
あとがき
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