こんな【さんねんねたろう】はイヤだ。

レッドハーブ

こんな【さんねんねたろう】はイヤだ。

むかしむかしのおはなしです。あるところにいつもてばかりいる男がいました。


穀潰こくつぶし!!」

無駄飯食むだめしぐい!!」

「役立たず!」

「働け!働け!!」


しかし、人からなにを言われても、まったく気にしないはがね精神メンタルをしていました。


「寝てばかりいないで、働いておくれ!」

「……Z……ZZ……Z……ZZ…」

「母さんも世間さまの目がねぇ……」


…………ぷぅ。


(こ、こいつ……!)


お母さんが頼んでも、寝ているだけ……。子どものときは普通の男の子だったのに、ある日とつぜん眠り始めたのです。


めし風呂ふろる……

めし風呂ふろる……


そんな毎日を繰り返していたので、この男をみんなは次第に寝太郎と呼ぶようになりました。



そして月日は流れ……



寝る子は育つという言葉があるように、寝てばかりの寝太郎は3年間で家くらいの図体になりました。


あるとき、村はかんばつで困っておりました。


「お祈りじゃあ!雨乞あまごいじゃあ!」


しかし、雨は降りませんでした。

村で緊急会議が開かれました。


……ガヤガヤ………ガヤガヤ………


「干ばつか……」

「これでは人が住めなくなってしまう!」

「あの山に大きな岩があるだろう?あれを転がして川の流れを変えられないじゃろうか?」

「しかし、大きいですぞ!?」

「家くらいある大きさだ。動かせないだろう」

「それにもし、失敗してこっちに転がってきたら村に被害が……」

「う〜むぅ……」

「もう村を捨て、新天地をですね……」


様々な意見が飛びいます。


「話は聞かせてもらいました」

「……寝太郎!?」

「あの岩を転がせばいいのですね、村長?」

「いや、村を捨て新天地を探すことに……」


すると寝太郎はあくびをしてぶつぶつ言いながら家を出ていきました。山の上にゆっくり登ると、寝太郎は大きな岩を押しはじめました。


「まさか……あの岩を動かそうとしているのか!?とても無理だ」

「たかが石ころ一つ!オレが押し出してやる!!」

「バカなことはやめろ!」

「やってみなければわからん!」

「正気か……!?」

「みんなほど結論を急ぎすぎもしなければ……この村に絶望もしちゃいない!!」


ぐぐぐっ……!


「寝太郎……」


寝太郎のまわりに村の男たちが集まりました。


「み、みんな…!?」

「村がダメになるかならないかなんだ!」

「やってみる価値はありますぜ!」


「「「 ううぉぉおおおおお! 」」」


ぐぐぐっ……!!


寝太郎とみんなは一生懸命に岩を押しました。

すると……


ごろごろごろ……


でかい図体が役に立ち、大きい岩が谷にむかって転がっていきました。そしてもっと大きな岩にあたり、そしてもっともっと大きな岩にあたり転がっていきました。そして川の流れをせき止め、川は流れを変えて村の畑に流れ始めました。


「村長!最寄りの川の流れが……変わっていきます!」

「な、なんじゃと!?」


畑は田植えの水で一杯になりました。


「「「 やった〜!水がきたわ〜! 」」」


村人はみんな大喜び。


「ありがとう!寝太郎!」

「村長……へへっ!」

「……なぁんて言うと思うかぁ!?」

「……え?これって感謝される展開じゃ?」


村長は怒って言いました。


「たわけ!3年間も働かず、メシだけ食って寝てたヤツを誰が英雄えいゆう扱いするかぁ!」

「いや、僕は干ばつの対策を考えていてですね…」

「じゃかぁしい!!」


ほかの村人もわらわら集まってきました。


「村のことを考えてた?そんなの、み〜んな毎日考えてたわよ!」

「しかも、いびきもおならも音が大きくて、あたしゃずっっっと寝不足だったよ!世間さまの目もあって……。よよよ……」

「母親を泣かせるとは…この親不孝もの!!」

「そんな怪力があるんだったら、出ししみせず毎日働いて村に貢献こうけんしろ!!!」

「ちょっとの活躍で今までのサボりが帳消しになるとおもうなよ!!」


お母さんも村人もここにきて不満が爆発しました。


「「「 働け!3年間寝ないで働け !!」」」


こうして寝太郎は3年間サボっていたツケをはらうために寝ないで働く日々が続きました。そしてそのあとも、村のみんなと仲良く(?)暮らしましたとさ。

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