第33話 胸に刺した花
モーシヌとティアラの二人は、数多の公募に出し続け。それでも、二人とも胸に花を刺す事は無かった。
終焉には程遠く、嘶く様に互いの想いを胸に。互いに、現実と腹筋を崩壊させながら。
今がその時と切り結ぶ。
「皆んな〜、ダメだったンゴ〜」
モーシヌが自分の放送で撃墜されマークをぺたりと貼り付けながら報告をする。
ちなみに、今回の配信はゲームではなく。ボロ宿巡りと称して、一泊二万円の宿に自腹で予約したが。予約が反映されておらず、電子決済の金だけ失って、途方に暮れ、一泊千円のその辺の宿に飛び込んで小声でカメラを回し。
それを、皆んな聴いて頂戴よと配信した所。流石、モーシヌさんはエッセイの方がいけるんじゃ無いですか? とかコメントで言われ「こんな、赤恥の歴史で入賞したくない〜」とか喚くまでがセット。
企画的には美味しいが、相変わらず虚無を量産していて。どうにも、変な笑いが止まらない。それでも、黒歴史系のライバーとしてはいい引きをしていると言わざる得ない。
証拠も録画しており、受付で反映されていなかった事も受付の許可を取ってから、カメラを回していて。それを、SNSで報告していた。
モーシヌは、基本的にこの手の証拠はノー編集で出していて。過去のコラボでは、評価サイトなどともコラボしている。
なので、それなりに信憑性を持って迎えられていた。
配信がついている間は、何処までもバカをやるしかなくて……。
配信を消して、パソコンやスマホの電源を落とし。天井を見上げては、いつまでこんな事が続けられるんだろうと不安になる。
「過労さんにも、ブラックにも。こんな姿は見せたくないかな」そういって、顔を洗い。また、インスタントコーヒーをいれてはかきまぜて。
過労さんは収入だけが終わってるなんて、ブラックは言ってたけれど。私は人生そのものが終わってた。両足も両手も切られて、電子の世界に溶け。何処の誰かも判らない状態で生きている様なもの。
世の中はコーヒーの様に混ざらない。おいしくもならなければ、苦味が和らぐ事もない。安らぎなんて何処にもなくて、私は世界に砕けて消える飛沫の様なもの。
人生にもう一度なんてなくて、ただ今報われない現実があるだけ。現実を恨んだ数だけ、物語を無数に書き続けられる。ただ、それだけ。もしも、読者も居なくて、あの二人も居なかったなら。
笑われて、後ゆびを刺されてるだけの私はきっと壊れている。
飛沫が、飛沫であれる事。広い世界に溶けていかない事。下り、追い越され。音も息もないまま消えていき。翻る事すらない。どうせ、死ぬのなら。
私はこの空で死んでいく。
私の様な氷河期は、学歴なんてなんの足しにならない事を世の中に教わった。夢を見続ける為に、私は表現の世界で生きている。
生きる事に未練なんてない、春なんて来ない。仮に来たとしても、手遅れだ。だから、私はどれ程笑われても。
まだ見ぬ、見たかった世界を追い求めて。作品を書き続けている。
未来を想い、冬が過ぎると信じ。光を浴びる事なく消えていった。周りには腐敗臭すら漂って。そんな現実すらかきかえて、優しい世界が何処にもない事を知っているから。優しい世界を、そんな場所で書き続けているに過ぎない。
ただ、一人の鉄の鳥を操る者として。嘘の世界で生きている私が、真実という目標に向かって飛び続ける。その生き様こそが。最高のエンターテインメントでしょう?。
私に、いつかなんてないの。土の中で死ぬのを止めたあの時から、蝉の様に空で砕けると決めたあの日から。
だから、ティアラ。あなたが私を追ってくると言うのなら。私は、追い抜かれるか。撃墜されるその時まで、あなたの前を飛び続ける。
もしくは……、私が彼女を追うようになるのかもしれない。
この空では、交差法の軌道で場所が入れ替わるなんて日常茶飯事。
身体を捩り、捻り、嵐の中の木の葉の様に落ちていく。その様が桜吹雪。
その身に、満ちていくのは不安と焦燥ばかり。翼は、まだコクピットで書いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます