第29話 武運拙く
相手にしない事で、無敵の防壁になりけり。火力の盾は貫かれぬ。不落でなくば、オンラインの世界で長生きなどできない。
我らは一歩も引かぬ、変質者としても。大喜利としても、退路など不要。ただ、前進あるのみ。
一本書いて世に示す。
「何故、これがダメなのよぉ!」翼は画面の前で頭を抱えた。
それは紛れもない現実だった。
「小学生の女の子に高校の制服着せた、イラストまで用意したというのにっ!」
「相変わらずモーシヌさんは、自分の読者層を全くわかってないブヒュ」
「読者層だけじゃなくて、視聴者層も全くわかって無いですよあの人」
相変わらず、過労とブラックに言いたい放題言われながら。それでも、過労に言われたコメントだけはだいぶ脳内フィルターされていたが。「じゃどんなサムネなら良かったのよ!」と過労に詰め寄るモーシヌ。
「例えばモーシヌさんとブラックさんが一本のリンゴ飴をキスしそうな距離で舐めるイラストとかどうです? ブラックさんがモーシヌさんの後頭部をそっと優しく支えるような感じで」
それは、ブラックじゃなくて。貴方にやられたい。イラストじゃなくてリアルでおなしゃす。という言葉が舌の当たりまででかかるが今放送中で、言った瞬間社会的に終わる気がしたのでギリギリ無言になる。
「ボクも、モーシヌさんみたいな。ペチャパイのおばさんじゃなくて、今のダンナみたいなイケメンがいいブヒュ」画面の前で歯を食いしばっている横で、あっけらかんとブラックが言ってのけた。
あいつに怖いものなんてないと言うのか。
「過労さんってイケメンなんですかっ!」コメント欄にそんな文字が並ぶとブラックが「超イケメンブヒュ、性格もイケメンで高身長ブヒュ。収入が終わってるだけで他は非の打ち所がないウサ」
(同接三桁の中で、収入終わってるとか家賃幾らとか暴露しまくってからに。胸を押さえながらダメージ受けてるでしょうがっ……。ガワでもわかる位、身体の位置が傾いてるわよ)
「モーシヌさんて、貧乳なんですか?」「小学生並みウサ、揺れるのはいっつもお腹だけウサ」一部のコメント欄が盛り上がってるなかでモーシヌは画面の前で顔真っ赤にしながら。
(あいつ、本当毎回毎回何暴露しまくってくれとんじゃ!)
「それにしても、動画は伸びてるのに。小説は泣かず飛ばず……」
「ライブでこれだけ個人勢で伸ばせてれば十分凄いと思うデュフ」
「しかも、伸びたきっかけが酒飲み管巻きASMRですからね……」
黒歴史量産系ライバーとかいうパワーワード。
「視聴者参加型やイベント型でさえ、量産してるのは自分の黒歴史だけデュフ」
「もっと、違う意味で流行りたかったんですけど?! っていか、もっと文章の方で評価が欲しいぃぃぃ」
ブラックと過労の二人は何とも言えない顔で、肩を震わせる。
サックスにトランペット、尺八などの演奏もしてきて。サムネやガワもセルフな程多芸でありながら。過労もそれに付き合わされているうちにできるようになった。
「そういえば、モーシヌさん。今日のオヤツは美味しいデュフ?」とブラックが尋ねると「珍しく、すごく良さそうな箱に入ってたこれでしょ。どこで買ったの? コンビニ?」と笑顔で尋ね。ブラックは悪い笑みを浮かべながら「超高級、特注ムースブヒュ。世の中にそれ一個しかないデュフ、ちなみにそれ一個でお値段五十万円するウサ」その瞬間顔が一気に老化し、スプーンがポロリと落ちた。「え? ごじゅう……」「うわぁ、相変わらずブラックさん。そんな凄いものをさもその辺で買ってきましたみたいな顔で手渡して、食べた後で暴露するとか」と過労が苦笑した。
こうして、今日のライブでも無事黒歴史が量産されたモーシヌだった。
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