侵食


その日、学校に行くと、友人の様子がおかしかった。

いつも明るい彼が、虚ろな目で、微かに震えている。


休み時間、彼はぽつりとつぶやいた。


「……最近、俺、変な夢を見るんだ。崩れた街で……人がいるんだけど、顔がなくて。」


心臓が跳ねた。

僕と同じ夢。


放課後、帰宅すると、部屋の床に砂が落ちていた。

拾い上げると、微かに鉄の匂いが混じる。血のような、でも違う。生臭い匂い。

不思議に思いながらいつも通りの時間を過ごした。


そして、その夜も夢を見た。

崩れた街で、人影が一歩、こちらに近づいてきた。

だが、その日の夢はそれ以外は特に何も無く起きると、腕に赤い線が走っていた。

爪で引っかいた痕でもなく、刃物で切った痕でもない。

何かが「掠めて」いったような、薄い線。




夢は、その日からに確実に現実を侵食し始めていったのだ。

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