ゲーム会社で恋を求めるのは間違っているだろうか?編

プロローグ:黒歴史という名の内定通知

【任務提示】:〈転職せよ──中二の業界へ〉

 報酬:固定給+業界デビュー+黒歴史リスポーン


 会社の昼休み。

 俺──西島直也にしじま なおやは、いつものように味のしないコンビニ弁当を片手に、スマホで某MMORPGのギルドチャットをぼんやり眺めていた。


 ……まさか、この日常が終わるとは思っていなかった。


 画面に突然、あの名前が表示される。

「数馬(KAZUMA)」


 ──リアルでも数少ないゲーム仲間で、某IT会社にいるって聞いてた。

 昔は同じネトゲでレイドを共に戦った中……まぁ、戦友みたいなもんだ。


 俺:「久しぶり。どうした、急に?」

 数馬かずま:「おう、聖使セイシ!ちょっと聞きたいことがあってさ」


 ……来た。


 この「聖使」という忌まわしい呼び名は、過去の黒歴史に由来する。

 俺がかつてMMORPGで使っていた厨二感MAXなキャラ名──「聖刻†Paladin(セイコク†パラディン)」の略称らしい。

 いや、正確には勝手に数馬が略しただけなんだが。


 「だからその名前やめろって!精子にしか聞こえねーだろ!!」

 「いやいや、語呂いいし、もう浸透してるから」


 浸透してるわけがない。

 お前以外使ってねぇよその名前。


 それはさておき──


 数馬:「うちの会社さ、今ちょっと人手足りなくて。

    ゲーム作ってんだけど、デザインできる人がいなくてさ。

    お前、昔からギルドのイベントとか企画してただろ?

    あれ、もうゲームデザインだよ。才能あるって」


 「いやいやいや、俺ただの事務職だぞ?業界未経験だし」

 

「大丈夫大丈夫!俺の推薦でいけるって!

 それに今の若いやつより、お前の方が絶対センスあるから!」


 こうして──

 俺は気付けば、ゲーム会社の「企画(プランナー)」として採用されていた。


 いや、正式には数馬の一言でそのまま入社である。

 いろいろ手順すっ飛ばしてる気がするけど……まぁ、もう引き返せなかった。



【現在ステータス】

 名前:西島直也

 かつての名:「聖刻†Paladin(セイコク†パラディン)」(通称:聖使セイシ

 職業:元・文系事務職 → 現・ゲーム企画職(異世界転職)

 状態異常:黒歴史+業界初日+あだ名が精子

 特記事項:本人は呼ばれたくないが、なぜか社内にセイシで紹介される予定

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