第2話 居酒屋レイド集会(後編)

【任務提示】:「社長の本音を聞き出せ」──報酬:追加料理&銘柄日本酒


 食事が終わると、沙耶が私を強引にトイレへ連れ出した。

 個室の前で、彼女はいきなり真顔になる。


「ねえ、絶対に会社入らないでね」


「いや、まだ何も──」


「言うから、あの人。“うちで一緒にやろう”って言うから。

 でも入ったら後悔するから。私は保証する。」


 真剣そのものの顔に、思わず息を飲んだ。


「今は外から助けるだけでいい。

 これ以上深く関わったら、ほんとに奈落だよ」


 奈落──その言葉が頭に残ったまま、私は店を出た。

 次のミッションは、この案件を受けるかどうか決めることだ。


 お会計は最終的に十四万円近く。

 財布はもちろん社長持ちだったが、

 沙耶は伝票を見た瞬間、顔を引きつらせていた。


 店の前には黒塗りのワゴン車が待っていて、

 神田は当然のようにドアを開けながら言った。


「じゃあ、まず私を送って、

 それから二人を順番に送ってあげて。

 ……それと、今日の話、前向きに考えてみてね。

 正社員になってくれたら心強いし、きっと面白いことになるよ」


 ──来た。

 沙耶の言った通り、勧誘イベント発生。


 私は笑顔を貼り付けたまま曖昧に頷き、ワゴン車に乗り込んだ。


 ──そうか。

 あの高級刺身と銘柄日本酒、

 店長おすすめまで頼んだ豪華っぷりは、

「会社はまだ余裕ありますよ、安心して手伝ってくださいね」

 っていうパフォーマンスだったわけか。


 満腹感と一緒に、胸の奥から苦笑と警戒が同時に湧き上がる。

 どうやら本当のレイド戦は、ここから始まるらしい。


【現在ステータス】

 HP:85/100 MP:40/50

 状態異常:警戒(奈落フラグ確定)

 特記事項:高級刺身バフ獲得、社長の財力アピール+30、疑念+20

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