《無能と追放された俺、実は最強でした》
@go_to1
第1話 無能の烙印
石造りの大広間に、冷たい声が響いた。
「アルディス。お前は今日限りでパーティから外れてもらう」
勇者パーティのリーダーであるロイが、俺を見下ろしていた。
仲間たちの視線は冷ややかで、まるで不要な荷物を見るかのようだった。
「……どういうことだ」
俺は必死に言葉を絞り出す。
「どうもこうもない。お前は何の役にも立たない“無能”だ」
「回復も攻撃も中途半端、探索も遅い。もう限界なんだよ」
仲間の一人が嘲るように笑った。
「村人を連れて歩くようなもんさ。足手まといだ」
胸の奥が熱くなる。悔しさか、怒りか、自分でも分からなかった。
俺は確かに不器用だった。戦闘でも支援でも、誰かのように華々しくは動けなかった。
だが、仲間の背中を守るために必死で剣を振ってきたつもりだった。
「……それでも俺は、ここまで共に戦ってきたはずだ!」
「はっ。自己満足だな」
ロイは鼻で笑い、背を向ける。
「お前に構っている暇はない。俺たちは魔王討伐へ向かう。
――“無能”に居場所はない」
冷たく突き放す言葉と共に、俺の冒険は終わった。
剣を置き、仲間たちから背を向けられ、広間を追い出される。
扉が閉ざされた瞬間、足が震えた。
全身の力が抜け、俺は膝をついた。
「……俺は、本当に……無能なのか」
その時だった。
胸の奥に、熱いものが弾けるように広がった。
――《吸収成長(アブソーブ)》、覚醒。
脳裏に響いた声と共に、俺の視界に淡い光の紋様が浮かぶ。
それは今まで隠されていた、俺だけの真なるスキル。
「……これが……俺の、本当の力……?」
絶望の底で目覚めたその能力が、俺の運命を大きく変えることになるとは――
この時の俺は、まだ知らなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます