オ〇禁始めてみた。
@Weakend
第1日
右手を必死に動かしている。だが宿題は全く終わっていない。課題はまだまだ序盤なのにも関わらずラストスパートのような手の動かし方をしている。……と思ったら、手が止まった。
「ふう」
俺は今、宿題が全く終わっていないのにオ〇ニーをしている。
どう考えてもおかしい。明日には連休明けの学校が待ってるのに、机に広げられたノートには白紙が目立ちすぎる。ペンは転がり、代わりに動いているのは俺の右手だった。
「こんなんじゃダメだよなあ……」
……と、毎回同じことを思っては、同じことを繰り返す。
俺の名前は——まあ、ありふれた男子高校生だ。夢は大きい。将来はモテモテで、ビジネスでも大成功して、テレビの前で「いや〜努力した結果です」なんて笑顔で言ってみたい。けど、現実は宿題すら終わらせられないオナ○ー野郎である。
⸻
シャワーを浴びて汗を流した後、湯船に肩まで浸かる。湯気の中でスマホをぼんやりスクロールしていると、ある記事の見出しが目に飛び込んできた。
「オ○禁で人生が変わった!成功者の共通点とは?」
「は?」と思いながらも、なんとなくタップする。
記事にはやたらキラキラした言葉が並んでいた。集中力アップだの、自信がつくだの、モテるだの……。
「……いや、うさんくせぇ」
そう思いながらも、心のどこかで妙に引っかかる。
俺は夢ばかり見ていて、行動が伴ってない。そんな自覚はある。オ○禁なんて馬鹿げてると思いつつ、「三日くらいで辞めるだろうけど」と軽い気持ちで決意してしまった。
⸻
湯船で天井を見上げながら思い返す。
俺は中学一年から、ほぼ毎日欠かさずやってきた。習慣、というより呼吸に近い。疑問を抱いたことすらない。
「いや、これ……逆に俺すごくない?皆勤賞じゃん」
自分で言って虚しくなった。まあでもだ。実は俺はそんなことを言っている場合ではない。
明日はゴールデンウィーク明け。大量に残された宿題が山のように机に積まれている。やるしかない。
——そうだ、オ○ニーに時間を取られなければ宿題も進むんじゃないか? 妙にポジティブな気分になった俺は、オ○禁を始める理由を“勉強”にすり替えた。
⸻
翌日、学校生活は拍子抜けするほど普段通りだった。
連休明けで眠そうなクラスメイトたち、提出物を出し忘れて教師に怒られるやつ、そして俺は机に座ってぼんやり。
「特に何も変わらんよな」
オ○禁初日だからといって超サイヤ人になるわけでもない。女子に急にモテるわけでもない。
ただ一つ違ったのは、「今夜はオ○ニーしない」という小さな決意を胸に秘めていることくらいだった。
⸻
夜になった。
いつもなら歯を磨いて、布団に入る前にお決まりの儀式。だが今日は違う。オ○禁を始めたばかりの俺は、それを耐えなくてはならなかった。
「くそ……こんなにしんどいのか」
時計の針が進むたびに、脳裏に浮かぶ映像を必死に打ち消す。宿題を広げて誤魔化してみるが、数学の公式が卑猥な記号に見えてくる始末。
「落ち着け、俺は成功者になる男だ……」
自分に言い聞かせ、ペンを動かす。何ページか進めてはいるものの、頭にはほとんど入っていなかった。
⸻
布団に入ったのは日付が変わった頃。
けど目を閉じても全然眠れない。頭の奥でムラムラとした衝動がじわじわ燃え広がっていく。
「やばい……これは地獄だ……」
体勢を変えても眠気は訪れず、ただ時間だけが過ぎていく。ようやくうとうとした時には、外の空が少し明るくなり始めていた。
——こうして俺のオ○禁一日目は終わった。
果たしてこれが三日坊主で終わるのか、それとも何かを変えるきっかけになるのか。答えはまだわからない。
⸻
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます