第5話 まあいっか!

 キーンコーン。

 カーンコーン。


「だっしゃあ! 行ってくらあ!」

「いってら~」


 今日こそは!

 今日こそ俺はハムカツサンドの王になるう!


 抜かれんのはムカつくけど、朝トレ始めてから簡単に抜かれなくなった気がするぜ! ま、結局は抜かれんだけどっ、はい出口乙!


 よっし、走れ走れ走……ん?

 何で御影、中庭にいんの?


 いやいやいや、気にすんなし。だったら今日は睨まれないってことだ、ナイスデイ! 用もねえからここは華麗で可憐にスルーして、購買に……




「……あっ」 




 ねえ、何で通り過ぎる寸前にミニタオル落としたの?! いや待て待て待て、気にしすぎだ。ここは心を鬼にして見なかったことに……あああ、俺の快速ダッシュが ミニタオルが風に吹かれて飛んでった!




「……もう! んしょ、よいしょ」




 俺は、見て……。










 今日は争奪戦、完全白旗だわな。まあ……仕方ねえか。ミニタオル取りに戻ったのは自分だし、普通に母ちゃんの弁当食えばいい。んだがいつかハムカツサンドをオカズにしてドヤ顔したるぜ。


「はい、どんぞミニタオル」

「あ、ありがとうございます」


 お、発見。

 購買にいない時は実は礼儀正しい系?


「あの……聞いてもいいですか?」

「……俺?」

「はい」

「答えられることなら」

「何でハムカツサンド、一生懸命走ってまで買いに行くんですか? 毎日毎日無理して走って」

「同い年だから敬語はいいよ、御影みかげさん」

「……!」


 あー! 

 ヤベえ、名前言っちまった!


「私のこと、知ってるんだ」

「うす」

「……そっか。私が陸上の特待生で、ケガをしてリハビリ中ってことも?」

「うっす」

「みんな、サンドイッチの為だけに無茶してあんなに走って……ケガをしたらこんなにツラくて苦しいのにってずっと思ってた」

「……」

「いつか絶対ケガしちゃうよ、やめなよ。私みたいになる前に」


 そんなこと考えて見てたんだな、御影さん。好きだったことができなくなって、てか。


 ケガをしてやりたいことができなくて悔しいって気持ちはよっくわかるんだよな……でも磯貝には下手に同情するとお互いが嫌な気持ちになるからやめとけって釘差されてっし……。


 さて、どうすっかな。

 うーん……ま、いっか!

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