若き監査官フィニアンは、ある日王都から辺境の小さな砦に派遣された。
そこで彼を迎えたのは、堅実で信頼厚い壮年騎士レオン。
レオンのもとで砦を守る兵士達と過ごす一ヶ月の中で、戦いとは何か、守るとは何かを知り、フィニアンは徐々にレオンに対し尊敬以上の想いを抱き始め──。
筆者の選ぶ静かで理知的な表現は、冷たく堅牢な砦の描写を余す事なく表現していて、読み始めてすぐに、自分自身がまるでその砦の中に立っているかのように、温度や湿度を感じ世界観に引き込まれます。
この物語には、相手に対するわかりやすい直接的な言葉や想い、激情などは出てきません。
ですが穏やかな交流を通して生まれる、フィニアンとレオンの確かな絆は、じんわりと心に沁み、読み終わった後、誰もがすぐに砦を懐かしく思い、振り向いてしまいたくなってしまう事でしょう。
情景と心情の丁寧な描写が魅力的な作品です。