いつも俺を馬鹿にしてくる男友達みたいな巨乳ボーイッシュ幼馴染に強がって「彼女ができた」と言ってから、様子がおかしい件
夜桜ユノ【書籍・コミック発売中!】
第1話 嘘とサイダー
「……で? 結局、期末の物理、赤点だったんだろ、祐樹」
放課後のファミレス。俺の向かいに座る幼馴染、橘千夏(たちばな ちなつ)は、呆れたように頬杖をつきながら言った。メロンソーダの氷をストローでかき混ぜる音が、やけに大きく聞こえる。
ショートカットの黒髪に、いつも着ているパーカー。口調はサバサバしていて、正直、そこら辺の男友達よりも気楽に話せる相手だ。ただ一つ、男友達と決定的に違うのは、パーカーの上からでも分かる、その理不尽なまでの胸の膨らみだった。
俺、高木祐樹(たかぎゆうき)はそんな理不尽に立ち向かうかのように威嚇する。
「うっせ。赤点じゃねーよ。ギリギリセーフだ、ギリギリ」
「それ、赤点と何が違うんだよ」
「全然違うだろ。俺の努力を認めろ」
「努力しなかったから一夜漬けになったんだろ? まあ、祐樹が留年したら、それはそれで面白いけどさー」
ケラケラと意地悪く笑う千夏。こいつとは家が隣で、物心ついた頃からの付き合いだ。腐れ縁とはまさにこのことだろう。
「お前こそ、どうなんだよ。部活ばっかで、勉強してんのか?」
「バスケ部は文武両道がモットーなんで。君と一緒にしないで」
ちびちびとポテトをつまむ千夏を見て、なんだか無性に腹が立ってきた。いつもそうだ。こいつはいつも、俺を子供扱いして、からかってくる。長年の関係が生んだ、この絶妙にムカつく距離感。
「全く、こんなんじゃ祐樹の将来が心配だよ。しょーがないから、私が勉強教えてあげる。そうと決まったら今から私の部屋で――」
――だから、つい、口から滑り出てしまったのだ。
「……別に、お前に心配されなくたって、俺には教えてくれる人、いるし」
「は? 誰? それ」
「誰って……そりゃ、彼女、だけど?」
言ってから、すぐに後悔した。ファミレスの喧騒が、一瞬遠くなった気がした。
千夏の動きが、ピタリと止まる。ストローを咥えたまま、くりっとした大きな瞳が、俺を真正面から捉えた。
「……かの、じょ?」
その声は、いつものからかうような響きではなく、妙に平坦だった。
「お、おう。最近できたんだよ。頭も良くて、優しい、最高の彼女がな!」
もう後には引けない。俺はなけなしの虚勢を張って、胸を張った。
千夏は数秒間、瞬きもせずに俺を見つめていたが、やがてふっと視線を逸らし、何事もなかったかのようにメロンソーダを啜った。
「……へえ。よかったじゃん」
その声も、表情も、あまりにもいつも通りだったから、俺は少し拍子抜けした。もっと「嘘つけ!」とか「どんな子だよ!」とか、食いついてくると思ったのに。
なんだよ、その程度の興味しかねーのかよ。
心のどこかで、がっかりしている自分がいた。
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【業務連絡】
リハビリで書いています。
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