探していたぬくもりは
篁 しいら
探していたぬくもりは
「只今」
帰ってはこない返事、暗い部屋。
いつもなら、寝室のベッドには君がいて。
その体に冷たい体で抱きついていく。
君はそれを苦々しくも、優しく受け入れてくれていた。
去年までは、僕らは同じだったのに。
そう考えていたら、急に体についた水滴で寒くなった。
濡れた服を床に散乱させ、半裸でベッドに横たわった。
嗚呼、君のぬくもりが無い部屋など、僕には居場所なんてありゃしない。
そんなことを考えていたら、無造作に置かれた携帯の呼び出し音。
習慣的にそれに手を伸ばして、画面を見て息を呑んだ。
「外を見て」
メール一文だけで、その姿のまま家を飛び出した僕は、周りからも滑稽な姿に見られただろう。
現に、目の前で笑われているのだから。
「相変わらず、何にも考えてなかったのね」
その笑みも
その声も
その瞳も
また目にすると思えなかった。だから。
「・・・逢いたかった」
「はい、私も」
冬の寒い空の下。
僕はまた、つかむことが出来たみたいだ。
君という、探していたぬくもりを。
END.
探していたぬくもりは 篁 しいら @T_shira
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