費用対効果
ボウガ
第1話
「ええ、ですから、支援をうけられてよかったですね」
「ごもっともです」
ある富豪の邸宅には、ファイナンシャルプランナーや弁護士などのチームが集まり、富豪の娘や息子たちの将来の相談をしていた。ほとんどが孤児であり、弁護士のAは彼の寛大さに感銘を受けていた。
富豪は葉巻の煙をくぐらせながら、まるでイルカのようにリングをつくっては一人ニコニコと笑みを浮かべた。どれほどの苦労を重ねれば、これほどの寛大さをもつことができるのだろうか?
「どうして、そんなに慈善事業にお金をかけたのですか?」
「お金になりますからな」
「は?」
「ですから、お金になります、我が国は福祉国家ですよ」
「つ、つまり、人々は手間のかかる人々に目を向けませんからね、支援が必要な病や重篤な精神病など、支援が受けられ、彼ら自身が生活ができるからそういうことですよね?」
とファイナンシャルプランナーが口をはさんだ。そして弁護士に小声でささやく。
「あまり怒らせると解約になりますよ、それに守秘義務がありますからね」
弁護士はその小声に腹を立て、言い返そうとしたが、富豪の言葉に目を丸くした。
「要するに稼ぎになる、あるいは、負債を減らせるんですよ、私の事業で遺伝子改良やら、土地の開拓やらをやった結果、様々な障害がでた子供たちですからな、多く集めれば集めるほど、搾取は見えなくなる、それに、若者など本当の敵を見極めず、勝手に身内で競い合うものです」
であれば、貧困救済のためというあのコマーシャルは?弁護士は、富豪のつくる煙が、これまで目にしたものの中で最もどす黒く感じたのだった。
費用対効果 ボウガ @yumieimaru
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