桜 DORPS

菜月 夕

第1話

『桜-DOROPS』


「ごめん』

 そう言って彼は去って行った。

 このシーンを何回繰り返しただろう。

 私の心がこの時間を閉ざしてしまったのだろうか。

 そして私の心が壊れて全てを忘れてしまうまで続くのだろうか。

 きっと、何度もまたここに戻って想い出して彼の言葉に心を傷つけ、粉々に砕けてしまうまで。

 

 またこの時に戻ってしまった。桜が何度も散るように。

 桜散らしの雨が今日も降っていて花びらも重たげに落ちていくだけだ。

 彼はまた私から去って行く。この時間のループを変える力があれば。

 その時、重たげに降っていくだけだった花びらがくるっと回り、私は今までと違い「ごめん」と言った彼に向かって一歩踏み出した。


 また、この時間に戻ってきてしまった。でも今はさっきの一歩がある。

 彼の口が「ごめん」の言葉を形作る前に私は彼に向かって走り出した。

 彼のびっくりした顔に向かって「この二叉野郎の浮気者が-」とパンチを放った。

 そう、きっと誰だってどんな時だったて最初の一歩はきっと踏み出せると。



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題名を見れば判ると思いますが、宇多田ひかるさんのSAKURA DROPS の歌をイメージして書いてみました。

「どうして同じようなパンチ何度もくらっちゃうんだろう」と言うのを時間ループにしてしまえば、と話しを作りました。

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桜 DORPS 菜月 夕 @kaicho_oba

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