廃嫡された王太子は沼にハマったようです
ひよっと丸 / 久乃り
第1話 つまりそういうこと
「時間が押しているよ。急いで」
そんなことを言いながらも、違う意味で気が急いていることぐらいエディエット自身分かっていた。二年前、成人して王太子の位を賜ったと同時に沢山の仕事がやってきた。次代の王として相応しいように国政に携わる仕事をこなしてきた。
王を支え妃がするような事も王太子となったエディエットに回ってきたが、母である妃の代わりとならば進んで承った。
本日の行事は国にとって大切な行事のため、随分と前から準備をしてきた。
王太子妃の発表
これを持って、王太子とその妃となる婚約者を広く国民に知らしめるのだ。次代の王となる王太子妃のお披露目である。立派な衣装に国民に配る為の菓子や記念品それら全ての手配をしたのは誰あろうエディエットである。
王太子妃となるのは宰相の娘アマリア。
もちろん、エディエットはアマリアとあったことぐらいある。王城の中庭で
ちなみに、エディエットの生母は王妃である。
だから、母の代わりにエディエットは王妃の仕事もこなしているのだ。後宮に関わる行事を取り仕切るのは本来王妃の役割なのだが、他国より嫁いできた王妃は未だにこの国の言葉に慣れていなかった。
(二十年経っても字が読めないなんて)
初めて王妃の書類を渡された時、エディエットは母に確認をしに行った。それなのに、王妃フィナは可愛らしく小首を傾げるだけだった。そうして横に控える侍女が書類を確認し、王妃にそっと囁いたのだ。
それを見た時、エディエットは血の気が引いた。母は字が読めない。それを目の当たりにしてしまったのだ。確かに、他国では高貴な生まれの女性はあらゆることを侍従にやらせるのが普通だ。それは朝の身支度から始まり、他者との会話に至るまで、扇で口元を隠して隣に立つ侍従に指示をするのである。
だが、この国では違う。
身支度などは確かに手伝わせるが、高貴な生まれでなくても女性も読み書きができる。そうでなくては自分に不利な契約などがまかり通ってしまうからだ。特に、自分の名前が美しく書けることは必須だ。サインの偽造を防ぐためでもある。代筆なんてとんでもない行為なのだ。
だが、目の前の母である王妃は平然と隣に立つ侍女に書類を読ませ、尚且つそれを生まれの国の言葉で説明させていた。エディエットはそれを黙って見ているしかなかった。
そう、それがいけなかったのだろう。
だが、もう今更なのだ。
「アマリア様のお支度が整いました」
今日のためにエディエットが発注したドレスを身にまとい、美しく髪を結い上げたアマリアが控えの間に現れた。それを見てエディエットは静かに頷く。
「素晴らしいです。では迎えが来るまでしばしお待ちを」
そう言い残しエディエットは控えの間を後にする。アマリアを迎えに父である宰相がやってくるだろう。だからこそ、王太子であるエディエットは宰相と出くわしてはいけないのだ。なぜなら
エディエットは人目を避けて廊下を早足で移動した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます