第4話 1階ボス戦
俺は今、ボス部屋の前に立っている。相手はホブゴブリン。
通常はレベル5で、巨大な棍棒を振るう強敵だ。推奨討伐はレベル4のパーティー。
だが俺はレベル6――一人でも勝てるはずだ。
「【身体強化小】、行くぞ!」
重い扉を押し開け、ボス部屋へ踏み込む。
中は広く暗い空間。足を進めると、壁際のランプが一斉に灯り、真ん中に座っていた巨体が立ち上がった。
ホブゴブリン――その黄色い眼が俺を射抜く。
「まずはお前のステータスを見せてもらう。【鑑定】!」
浮かび上がった情報を見た瞬間、血の気が引いた。
Name:なし 種族:ホブゴブリン Lv7
HP 150/150
MP 110/110
筋力 31
防御 29
知力 27
敏捷 30
器用 32
幸運 1
スキル
《アクティブスキル》
【身体強化小】【咆哮】
《パッシブスキル》
【中級棒術】
「イレギュラーボス……!」
イレギュラーボスとは通常のボスよりレベルが2〜3上がっているモンスタ一である。
驚いた俺は一瞬、油断してしまい、その間にホブゴブリンが咆哮を上げた。
「グガアアアアーーッ‼」
地鳴りのような咆哮。全身が震え、硬直する。
その隙に振り抜かれた巨大棍棒が壁を砕き、俺を吹き飛ばした。
「痛ぇぇぇぇ!」
壁に叩きつけられ、肺から空気が絞り出される。
視界が揺れ、血が口から飛び散る。
「……まだ、死ねない!」
立ち上がりざま、【模倣】を発動。
『スキル【模倣】により、スキル【中級棒術】【身体強化小】【咆哮】を獲得しました。』
『すでに所持しているスキルが模倣されました。スキル【中級棒術】【身体強化小】の熟練度が上昇します。』
「……なら、こっちも! 【咆哮】ッ‼」
俺の叫びが空気を震わせ、ホブゴブリンが一瞬たじろぐ。
その隙に棍棒を振り下ろすが――
「ガァッ!」
間に合わず、受け止められ、逆に弾き飛ばされる。
棍棒同士がぶつかり合い、火花が散る。
「くそっ……強ぇ……!」
互いに棍棒を叩きつけ合う。
一撃ごとに骨が軋み、衝撃が腕を痺れさせる。
「(【身体強化小】の効果はあと20秒、どうすればいいんだ…。)」
すると折れた短剣が腰にあることに気づいた。
刃の部分は少ししか残っていなかった。それでも……使い方次第だ!
「喰らえっ‼︎」
俺は全身の力を込め、折れた短剣を投げつけた。
刃は真っ直ぐ飛び、ホブゴブリンの左眼に突き刺さる。
「グガアアアアアアッ‼︎」
ホブゴブリンは棍棒を放して両手で顔を押さえて叫んでいた。
「……終わりだ。食らえッ!」
体勢を崩したホブゴブリンの腹部に、渾身の突きを叩き込む。
棍棒がめり込み、骨が砕ける手応え。
絶叫とともに巨体がのけぞった。
「トドメだぁぁぁぁッ‼」
頭上から叩き下ろした一撃が頭蓋を粉砕し、血が床に飛び散る。
ホブゴブリンの巨体は地響きを立てて倒れ、そのまま動かなくなった。
消滅はしない――血の匂いと死体だけが、この空間に残された。
「……っは、はぁ……やった……!」
人生初のボス討伐に成功したのだった。
スキル【咆哮】 熟練度:0%
説明:発動すると2〜3秒間、対象の体を麻痺させる。自分よりレベルが高い相手には効果が減少する。熟練度を上げることで進化可能。
作者より
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