第1話 謎スキル【???】

俺、金森彰は今、塔の一階で同級生・水原朗希のパーティーに「荷物持ち」として参加している。

「おい、ゴミスキル! さっさと魔石を回収しろ!」

「……はい。」

朗希の火球魔法に焼き殺されたゴブリンが、地面に黒焦げの死体を晒していた。

モンスターは死んでも消えない。だから探索者は短剣で胸を裂き、体内の魔石を取り出さねばならない。

血と肉の匂いが鼻を刺す。俺は吐き気を堪えながらも、ゴブリンの胸を切り裂いて青白く輝く魔石を取り出し、袋にしまった。

なぜ俺が「ゴミスキル」と呼ばれているのか――その理由はステータスにあった。


Name 金森彰  種族:人間 Lv1


HP 10/10

MP 10/10


筋力 1

防御 1

知力 1

器用 1

敏捷 1

幸運 1

スキル

《アクティブスキル》

【???】

説明

???


説明欄も「???」で、内容は不明。

スキルは使えず、能力値もオール1。雑魚のゴブリンすら倒せない。

三ヶ月経ってもレベルは上がらず、「ゴミ野郎」「ゴミスキル」と笑われ、今では朗希の荷物持ちに甘んじるしかない。


「《ファイヤーボール》!」


朗希が再び火球を放ち、別のゴブリンを焼き殺す。

死体が地に転がり、肉の焦げる臭いが漂った。


「ほら、回収!」


俺は無言で魔石を抉り出した。そんな時、朗希がにやりと笑う。


「なぁ、ゴミ。次はお前が戦え。」


「えっ……!? 無理だ、死んじまう!」


「俺がやれって言ってんだ。逆らう気か?」


「……わ、分かったよ。」


俺は仕方なく短剣を構え、一体のゴブリンと対峙した。


「はぁぁぁっ!」


必死に斬りかかるが、攻撃はすべてかわされ、逆に殴り飛ばされる。地面に叩きつけられた俺は叫んだ。


「朗希! 助けてくれ!」


だが――振り返っても、そこに朗希の姿はなかった。


「……逃げた、のか。」


絶望に染まる視界の中、ゴブリンが棍棒を振り上げる。

――終わりだ。そう思った瞬間だった。


「グギャギャギャ!」


ゴブリンが俺を見下し、笑った。


「俺を笑った……? ふざけるなぁッ!」


怒りに任せ、近くの岩を掴んで顔面に叩きつける。虚を突かれたゴブリンがよろめく。


その隙に体当たりし、短剣を何度も突き立てた。


「見たか、この野郎……!」


ゴブリンは絶叫し、血を吐きながら倒れた。

死体が地面に転がり、胸の奥から淡く光が漏れている。

次の瞬間、脳内に声が響いた。



『レベルが上がりました。初のレベルアップにより、スキル【???】が【模倣】になりました。スキル【鑑定】を獲得しました。』

『瀕死の状態で同レベルの敵を撃破。称号【絶対絶命の生還者】を獲得しました。称号効果により、スキル【踏ん張り】を習得しました。』



「なっ……!?」


慌ててステータスを確認する。


Name 金森彰  種族:人間 Lv2


HP 20/20

MP 15/15


筋力 1→5

防御 1→5

知力 1→5

器用 1→5

敏捷 1→5

幸運 1→5

スキル

《アクティブスキル》

【模倣】【鑑定】

《パッシブスキル》

【踏ん張り】

称号 『絶対絶命の生還者』



スキル【模倣】

説明:鑑定した生きている対象のスキルを模倣し、自分のスキルとして習得できる。

同じ相手から再度スキルを模倣できるのは半年後。


スキル【鑑定】

説明:敵やアイテムの詳細情報を確認できる。


称号『絶対絶命の生還者』

説明:同レベルの相手を瀕死の状態で撃破した者に与えられる称号。

スキル【踏ん張り】を獲得する。



スキル【踏ん張り】 熟練度 0%

説明:致死ダメージを受けた際、HPを「1」で踏みとどまる。熟練度を上げることで進化可能。



「……つまり、【鑑定】で敵の能力を見抜き、【模倣】で奪い取れるってことか!」


ゴブリンの死体を見下ろし、胸から魔石を取り出しながら、俺は笑った。

三ヶ月ぶりに、本当の希望が見えた気がした。




作者より

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