クライネレビンの夢の中

日下 紫乃

~プロローグ~ クライネレビンの夢の中

 カーテンの隙間から、うららかな陽光が差し込む。

 ベッドのシーツを、やわらかく染めていく。


 夢の底から浮かびあがってきたばかりの意識。

 開ききっていない目には、その光がひどく眩しくて、思わず顔をしかめた。


 ぼんやりとした意識のまま、カーテンを閉めようと腕を伸ばす。

「……重い」

 うっすら目を開けた彼が、腕の下から小さく抗議の声を上げた。

「ごめん、眩しくて」

「ん」


 彼は幼子のように目をこすり、そのままシーツの中で丸くなる。


「まだ寝る?」

「……もうちょい」

「そうだね」


 たんぽぽの綿毛のように、ふわふわとした思考と言葉が、静かに漂う。


 指先が触れて、

 手のひらが重なって、

 生きているあたたかさが、ことん、と落ちてくる。


 一瞬だけ視線が絡んで、ふわりとほどけた。


 そのまま、夢に沈んでいく。

 ――もう少しだけ、このままで。

 

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