電光石火
白き雷を残し目にも止まらぬ速さで駆けるディオンが力強く走るマグナとの距離を詰め、一気に聖槍で真正面から貫きにかかる。それを避ける事なくマグナは右手を開き燃え上がる掌底で真っ向から受け止め、凄まじい衝撃が舞台に走り亀裂を入れた。
様子見などない全力の攻撃に嬉々するようにカラードが笑みを浮かべながらカードに魔力を込め、シェダもカード入れに手をかけ刹那に両アセスが離れたと同時にカードを切る。
「オーダーツール、スレイヴソード!」
「スペル発動サンダーフォース!」
右腕を黒鉄の分厚い刃へ換装したマグナが刃へ炎を纏わせ一気にディオンに襲いかかり、雷光を纏ったディオンもまたそれを難無く躱してマグナの背後へと回り込む。
刹那、マグナは翼を広げ炎を噴出して迎撃しディオンを押し退け反撃を許さず、だがディオンも後ろへ跳んでからすぐに聖槍に力を入れて構えた。
「
力強く繰り出される突きが空間を歪ませ、聖槍より放たれる白と黒の雷が螺旋を描きながら衝撃波を伴いマグナへと向かう。これに対しマグナは荒々しくスレイヴソードを振るい強引に切り裂こうとするも、ディオンの技は容易くスレイヴソードの分厚い刃を粉砕し右腕もろとも捻じ切り右翼も吹き飛ばす。
が、マグナ本体は健在であり技が終わった瞬間に一気にディオンへ接近し、左腕に噛みつき炎を流し込みながら勢いよく振り回し舞台へと叩き伏せる。次いで繰り出される踏みつけは転がってディオンは避けすぐに立ち上がり、指先を動かそうとして焼かれた左腕の具合を確かめ使い物にならないと判断し聖槍を右手のみで持ち直す。
(恐れ知らずにも程があるな……火の精霊サラマンダーがここまで荒々しいとは)
四大属性を象徴する四精霊の中でサラマンダーは好戦的の傾向こそあれど、マグナ程の荒々しさはディオンも見た事はなく、同時にそれがアセスとしてカラードと長年戦いを繰り広げた結果と見抜く。
百戦錬磨の精霊マグナが粉砕された右腕度翼を再び炎で作り出し魔力を固め鎧を纏い元に戻り、直撃させねば倒し切れないのをシェダは悟る。一方で、マグナの特性からある可能性もまた気づき分析を進めていた。
(どうして連札劇を使わない……? 使わないのか、使えないのか、それとも、待ってるのか)
連札劇はカードの相乗効果で威力を高め充填時間を短くし、魔力の消耗も抑える為のものだ。今シェダとの戦いが始まってまだカラードは連札劇を使ったり仕掛ける様子はなく、その事がシェダは引っかかるものがあった。
圧倒的手数とそれにより上乗せされた攻撃で畳み掛けるのがカラードの戦術、それをしない事は不自然そのもの。となれば理由を考え、それがマグナにあると予想しカードを静かに抜く。
「ディオン、藪を突くけどいけるか」
「片腕が使えない程度だ、藪を突いて仕留めるくらいはできる」
能力を見極める為に必要な戦略を練ったシェダの意思を感じたディオンが聖槍を短く持って両足に力を入れて低く姿勢を落とし、次の瞬間に電光石火の如くマグナの懐へ入ると素早く突きを繰り出しそのまま突き飛ばす。
一瞬の出来事にカラードも対応できなかったもののマグナの鎧が微かに傷をつけた程度であり、吹き飛ばされ着地するまでに傷も修復される。だがそこからシェダは予想が確信になり、カラードも気付かれた事を察しながらカードを抜く。
「ホーム展開、炎の楼閣!」
舞台に熱風が吹き荒れながら炎が舞い上がり、形成されるはそびえ立つ炎の高殿だ。その屋根の上にマグナが居座る形となりディオンは炎と熱波に阻まれるものの、聖槍オーディンに力を入れて白の雷を纏わせるとマグナに狙いを定める。
「
「ツール使用ヒートアップシールド!」
閃光と共に投げられた聖槍オーディンがマグナを刺し貫いたかに見えたが、貫いたのはカラードが使いマグナが手にした燃える真紅の盾ヒートアップシールドのみ。切っ先が身体に触れるギリギリで聖槍は止まるものの、次の瞬間にヒートアップシールドが砕け散り、ディオンが右手を引くと聖槍と繋がる雷の鎖が引かれ手元へと戻された。
攻撃に素早くカラードは反応しカードを切って防いだ。それを見た事でシェダの疑念は確信に変わり、応えるようにカラードもよくやるぜと口にし腰に手を当てシェダへ目を向ける。
「もう気づくたぁ流石はここまで戦ってきたリスナー……だな」
「自分の魔力で鎧を作ってるって事はその分リスナーの魔力も消耗し続ける、最初から本当の姿でなかったりカードを切ってこないのは消耗を抑える為……っすね」
真化したマグナの特性を言ってみせたシェダにカラードがその通りだと返すと、すぐにマグナが楼閣から飛翔し一気にディオン目掛け急降下し攻めへと転じた。真っ直ぐ突っ込んでくるマグナを迎撃せんとディオンも動きに合わせ跳び上がり、噛みつきを躱しながら身体を貫かんとするも尻尾の一撃を受けて舞台へと叩きつけられてしまう。
すぐに起き上がりながら距離をとってマグナの吐く炎を避けるディオンもまた聖槍を振り抜いて地を走る白い雷を放ち、マグナもこれを飛んで避けながら一瞬で距離を詰めて突きを繰り出すディオンの一撃を避けさらに離れた。
「その調子だぜ! スペル発動バーンエッジ、ツール使用ライジングブレード!」
マグナの肘から反り返る刃が現れながら燃え上がり、刹那にディオンへ爪と肘刃との二連撃を仕掛けそこへ尻尾での突きを加え反撃する余地を与えずにマグナが攻めにかかる。
一度攻勢に入ってしまえばそこからは戦いの流れは一気にカラード側へと傾き、攻撃を避け、聖槍で受け流し、防ぐディオンは防戦を強いられるが対応しきり、シェダも冷静に状況を見極めながらカードを選ぶ。
「スペル発動サンダーバインド!」
素早く突き出される掌底に合わせディオンが聖槍を突き出して攻撃同士を打ち合わせ衝撃波が広がる中で、聖槍を伝わりマグナの腕へ白い雷がまとわりつきすぐに離れるが一気に放電しながら広がり全身を拘束する網と化す。
だがすぐに自力でマグナはサンダーバインドを破って自由を取り戻し、真上へ跳んだディオンに顔を向け紅蓮の炎を浴びせる。が、同時に頭部を切断されてしまい焼き尽くす事を阻止されてしまう。
「流石は英雄サマだぜ、楽しいな……これだから戦いは面白え!」
カラードの入墨が激しく明滅し、闘争心の昂りや喜びに満ち溢れるのを表すかのよう。消耗する事も傷つく事も戦いを楽しむ為の調味料のようなもの、
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