8話 二人のガールフレンド

新高一年生最強決定戦終了から2日後の夜のこと、


「小魚!明日僕を絶対に置いていくなむしよ!!」


「え?なんで?」


「なんか…いい予感がするむし」


「悪い予感じゃなくて?」


「うん」


「あー、分かった」


ベットに入った二人はこんな話をしていた。


そして次の日、小魚は準備万端。ムッシーはまだ寝ている。雷魚はとっくに学校にいった。


「まったく…ムッシー!おきろ!」


「…………」


「ムッシー!!!!!」


小魚はムッシーを手に乗せて激しく左右に揺さぶった。


「…………」


「はぁ、まったく…」


すると小魚は鍋とお玉を持ってきてそのお玉で鍋をガンガン叩いた。


「ムッシー!起きろ!!」


ガンガンッガンガンッガンガンッ!!


「これでも起きないか?」


今度はメガホンで


「ムッシー!!」


起きる気配はない。今度はマイクで


「あー、あー、あー、マイクテスト、マイクテスト…………ムッシーィィ!!!!!!!!!!!!!!!」


まだ起きない。


「仕方ない…最終手段だ。あー!ムッシー!せっかく美女と!!!!!会いに行くやくそくしたのになぁー!!」


「美女」というのを耳にした瞬間ムッシーは目をがん開きにして飛び起きた。 「いくむし!で、いつむし?」


「うそだよ、いくぞ!遅刻しちゃう!」


小魚はムッシーをひっつかんで部屋を出た。


「ムッシーのせいで遅刻するじゃん。」


小魚は走りながら言った。


「僕のせいじゃないむし!」


「なんでそういえるんだよ」


そして小魚が曲がり角を曲がろうとしたとき、走ってきた晴魚に衝突しかけた。


「あっぶな…ごめん!」


そう言って走り去ろうとした小魚に晴魚は言った。


「まって!」


「え?声が…晴魚か?」


晴魚はずいぶんと可愛らしい声になっていた。


「うん…えっと…ありがとう。」


「え?何が?」


「えーっと…」


その時小魚の肩から大きな声がした。


「むっひょー!!1000年に1人のぉ!美女むしぃー!!!」


「え?今なんか聞こえたような…」


晴魚がキョロキョロしていると小魚は晴魚の腕をつかんでいった。


「遅刻するよ!いこう!」


「うん」




授業中小魚はムッシーに言った。


「1000年に1人の美女って晴魚のこと?」


「そうむし!可愛すぎたむし!」


「ふつう一目見たときになる反応なんよ、それ」


「声むし!声!女は声むし!」(あくまでムッシーの感想です。)


「いやそんなことないだろ」




そして休み時間…


「あの…小魚君。」


晴魚だ。


「あ、どうも」


「あの…ありがとうね」


「なにが??」


「思い出させてくれて…」


「思い出させた???そんな覚えはないけど…」


「小魚君いったじゃん。僕の中に師匠がいるって。」


「うん」


「私、3年前にお母さんが死んだの。」


3年前…………




  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




晴魚は涙目で言った。


「お母さん…死なないよね?死なないでよ!絶対!」


「大丈夫だよ!…」


晴魚のお母さんは力強く言ったがどこか弱弱しくもあった。晴魚の母は1年前からおもい病気を抱えている。医者から


「もしかしたら…助からないかもしれません。お母様を信じて今は待つしかないです。」


とも言われている


「死なないって、約束!」


「うん。約束!」


そんな母親と約束を交わした次の日。医者から突然言われた。


「お母様の余命は…もう…今日には…」


「!…………」


晴魚と晴魚のお父さんはショックで言葉も出なかった。お母さんの病室に入った瞬間晴魚は泣き崩れてしまった。


「お母さん!…………死なないって…死なないって約束したじゃん!!…………おかぁさん!…………約束…………破らないでよ…………お母さんなんて…………お母さんなんて…」


「晴魚…」


お母さんが弱弱しく口を開いた。


「大丈夫…お母さんは死なない…この世界にはいなくても…晴魚の…………心の中では…………生きてるよ…………それとね…………晴魚…ありがとう…………」


「お母ぁさん!!!!」




  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「約束破ったこと怒ったのに…お母さんは優しく言ってくれた。」


晴魚は小魚に言った。


「それがきっかけで部屋に閉じこもっちゃって…………そうしてる間になんで悲しいのかなぜか忘れちゃったの…それで、性格と声が激変したらしいんだ。でも小魚君のおかげで思い出した。ありがとうね!本当に!私、お母さんの分まで元気に明るく生きる!!」


「そうだったんだ…がんばってね!応援してるよ」


「あの…それで…一緒に行動?してくれない?そこのいも虫さんみたいに。」


「むし!?ばれてたむし!?」


「うっふふ、まーね」


「うんまぁいいけど」


「やった!よろしくね、小魚君!」


それを遠くで見ていた雷魚と宝魚はこそこそ言った。


「なんか感じいいな」


「ついに小魚も彼女ができたか…」


「ずるい!てか晴魚あんなかわいかったっけ?」


「え、それな!何十倍もかわいくなってる。」


そんな2人が見えていたらしく、晴魚は大声で言った。


「そこのお2人さんもよろしくね!」


「え、あ、う、え?あ、うん、よろしく」


「うん、よろしく」


「え!?兄ちゃん、宝魚!?いたの?」


「…………やべっ」


10秒ほど二人でこそこそ話し始めてきりっとしていった。


「いや、たまたま通りかかっただけだけど??」


「…………ふーん」


その時宝魚の背後から声が聞こえた。


「あ、あの」


「うん?」


宝魚が振り向くとノエルがいた。


「わ、私も、宝魚君と友達になりたい!です」


「え?」


「あの…はじめて言われたの…初めて褒められたの自分の能力。私、親がすごいスパルタで…何しても褒められないし、何でもかんでも命令させられるし、でも私の親すごい偉い人だから言われた通りにやるしかなかった。でも魔法学校にきて解放された。それで、宝魚君に強いねって、すごいねって褒められてなんか…その…………友達に…なりたいなって…………」


「うん!いいよ!」


「え?ほんと?ありがとう。よろしくね!」


「うん!」


宝魚が迷いなく友達になってくれたおかげかさっきまで真っ赤だったノエルの顔が元に戻っていった。


「…………あのさ…………俺は?俺のガールフレンドは?」


雷魚が4人を見回した。


「…………いないw」


と宝魚が言ったとたん雷魚以外全員が吹き出した。


そしてまた小魚の肩から声がした。


「むっひょー!1000年に一度のびぃじょむしー!」


「え!?なにそのいもむし!?」


ノエルが驚いているとムッシーが言った。


「ふっふっふ。僕はね、神むし!」


「か?み?」


ノエルの頭は ? が大量に飛んでいる。


「えっとね、こいつはムッシーで、ベラベラベラベラベラベラベラベラベラベラベラベラベラベラベラベラベラベラってことがあったんだよ」


「へぇー」


ノエルと晴魚はムッシーをじろじろと見た。


「そ、そんなに見つめると…………へっへへ」


ムッシーの顔は真っ赤になった。


「きんも」


男三人組がそろえていった。それが聞こえていなかったのか得意げに


「あーっはっはっはっはー!やっぱり僕のいい予感が当たったむし!」


といった。


そして放課後三人はこれまでのことをノエルと晴魚に伝えた。そのあと、それぞれの部屋に戻っていった。


「いやぁ、やっぱり僕の予感が当たったむし!」


「まったく、起こすの大変だったんだぞ!」


「というか起こさずにそのまま連れて行ったほうが早かったんじゃないむしか?」


「…………たしかに!」


「あーはっはっはっはっはバカむしねー!」


といつまでも陽気なムッシーであった。

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