第19話 逃走

「勝てねえ」



25年以上弱男じゃくだんとして生きてきた俺の本能が告げている

意識を「闘争」ではなく「逃走」に切り替えていく


まだ距離はある

「小鬼の頭目」でゴブリンを10体程出し、身体強化を発動させ

土魔法を発動する


「おい、魔法をぶっ放したら二人であいつの左側を抜けろ」


殿しんがりは俺だろうなあ

指示通りに二人が水と風の刃を骸骨武者に向かって放つが全て剣で払われてしまう


俺は一呼吸遅らせ土の壁を敵の左側に出現させる


女性陣が移動を始めると同時に、残鍛迷途ざんたんめいとで生み出した槍を

「強肩」とポルタ―ガイストで投げつけ弾幕を張る

同時にゴブリンの半分を女性陣の護衛に付け、残りを突っ込ませる


土の壁を使いながら横を抜けようとするが

槍の雨とゴブリンを1瞬で蹴散らしながら、瞬間移動のように距離を詰めてくる


「盾じゃ受けれねえ」防陣の腕輪を発動し、居合のような斬撃を止める

防壁にヒビが入るが、結果的に刀が挟まる形となり動きが止まった


俺は「強肩」を発動させた盾で殴りつけ、後ずさりながら距離を取る

一度後ろを確認すると、こちらをチラリとも見ずに逃げていく2人が確認出来た

むしろ薄情で助かるよ。無事が嬉しくて涙が出るぜ



開いた距離を保ちながらさっきよりも大量の槍の雨を降らせると同時に

再度ゴブリンを10体程出現させ、1体を残して突撃させる



またも1瞬で蹴散らされ、距離を詰められる

残したゴブリンが飛びかかるが、1振りで横なぎに両断される


「ドズッーーー」


鈍い音が聞こえる。俺は両断されたゴブリンごと槍で貫いていた

「見えなきゃ避けれねえだろ?」と格好つけた事を考えていると




同じくゴブリンごと貫いた剣が俺の体に剣が刺さっていた



「かっっ…⁉」

腹に刺さった痛みで血を吐きながら膝をついた

俺の槍も刺さっていたが動きを止めるまでには至っていなかった


止めを刺そうと骸骨武者が剣を振り上げた瞬間




槍の雨が降り注いだ


さっきのポルタ―ガイストのタイミングで打ち上げておいた槍が時間差で降り注ぎ、骸骨武者の動きを止める



「お約束も勉強しとけよ」

痛みに歯を食いしばりながらも盾で殴り飛ばす


再度ゴブリンを召喚し、俺は後ろを振り向き逃走した

途中でハイポ―ションをがぶ飲みしながら、脇目も振らず逃走する


もう魔法を発動出来る魔力は残っていない




幸いな事に、敵は追ってこなかった


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る