第9話 星座

数日後の放課後。

昇降口で下校しようとしていた心春こはるを、あかりが呼び止めた。

「待って!やっぱりもう一度話したい!」


心春は少し驚きながらも、振り返った。

「……また勧誘?しつこいなぁ」


結衣ゆいがため息をつきながら言う。

「光、あまり強引にしたら逆効果よ」

「でも……!」


はながそっと光の肩に手を置き心春に提案した。

「じゃあ、落ち着いて話そう。校舎裏でね」


校舎裏へ向かう途中、煉佳れんかがいきなり言った。

「心春!腕相撲しようや!」

「えぇ……?今?」心春は苦笑。


平らな場所を見つけ本当に始める2人。

「うぉー!」

「ふっ……!」

結果は心春の勝ち。


「ぐぬぬ……根性が足りんのか!?」煉佳が地面に突っ伏す。

「いや、普通に力で負けただけやろw」莉愛りあが笑い転げる。

「相変わらずはしたないわね……」瑠璃るりが小さく首を振った。


そんな空気を和ませた後、全員は真剣な顔で心春を見つめた。


ひっそりとした夕焼けの陰で、心春は小さく呟く。

「中学のとき、バスケ部にいたんだ。エースとして……でも、推薦とか大人の事情で、純粋に楽しめんくなって。気づいたら辞めとった」


光も花も息をのむ。

心春は自嘲気味に笑った。

「やけんさ、また夢中になって挫折するのが怖いんよ。アイドルって、楽しそうやけど……本気になるのが怖い」


光は心春の手を取り真っ直ぐに見つめた。

「だから挑戦するとよ!失敗するかもしれんけど。でも、それでも一緒に夢中になれる仲間がおる!私たち、絶対一緒にやりたい!」


その言葉に、心春の胸の奥で、忘れていた熱がふつふつと蘇った。

「……光ちゃん、本当に元気やね。……でも、そんな熱さに、ちょっと憧れてたのかもしれんね」


そして笑みを浮かべ、はっきりと告げた。

「分かった!私もやるよ。本気で!」


「よっしゃー!!!」光は大声で叫び、花も嬉しそうに笑った。

見守っていた煉佳や莉愛、結衣たちも、安堵の笑みを浮かべる。


こうして、風間心春が正式に加入。

アスターはついに9人揃い、星座が完成する瞬間を迎えた。

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