ラブソング
紺野真
ラブソング
名前をつけるということ、それら全てがラブソングなんじゃないか
数日前の大雨で桜はほとんど地面で咲くことになって、ぼくは肩が凝って困ることになった。
最後に泣いたのは、いつだったっけ
雨の日の野良猫はどこで雨宿りするんだろう
ぼくはラブソングをうたわない。
歌えるのかも、未だ、不明。
学生服姿の友達がうだつの上がらない大人になっちまったぼくに何か話しかけてくる
ぼくは、それに答えないでいる
やがて部屋に閉じ篭り、鍵をかけるだろう
―どしゃ降りの中、帰宅した母に大きなタオルを渡した。
「ありがとう」と言われて、ぼくは照れて黙って頷いたんだっけ―
もしもラブソングを歌うとしたら
母か猫の事しか歌えない
ぼくにだけのラブソングを
歌ってくれた母を
星になった白猫を
ぼくらの特別は世界中でぼくらしか知らないラブソングだ
ぼくは誰にもなににも名前をつけたくない
ラブソングという呪いを誰かに与えることなんて
完成されたラブソングを何度も歌ってやることしか、ぼくには、
ラブソング 紺野真 @konnomakoto
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