第29話 全部を知りたい

彼女はシュンスケの胸に顔を埋め、ぽつりとつぶやいた。




「私、日本に来たら……毎朝一緒に朝ごはん作りたいな」


「いいな。弁当も一緒に作るか?」


「うん!」


「休みの日は……どこ行きたい?」


「たくさんあるよ。温泉も行きたいし、スキーも行きたいし……それから、シュンスケの実家にも行きたい」




その言葉を聞いた瞬間、彼は吹き出しそうになった。




「実家……ハードル高いぞ?」


「ふふっ、いいの。だって、シュンスケの全部を知りたいんだもん」




彼女の言葉に、胸がじんわりと温かくなる。


(この子となら、未来を作れる――本気で、そう思える)




「ありがとう、エミリー」


「……なにが?」


「全部、言ってくれて。全部、考えてくれて」


「……こちらこそ」




二人は笑い、また小さなキスを交わした。


その夜、未来の話を語り合い、何度も何度も抱き締め合い、朝まで寄り添って眠った。




彼女が日本に戻ってくるその日まで、二人の夢は、もう始まっている。




(続く)





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