【書籍化】困っていた金髪白人美女を助けたら、一晩だけのはずが妻になった【第35回フランス書院文庫官能大賞1次選考通過作品】

親指小太郎(おやゆびこたろう)

第1話 孤独な夕暮れ

シュンスケは、仕事を終えて都内の喧騒を抜け出した後、人気の少ない裏通りをゆっくり歩いていた。小さな個人事業を立ち上げて数年、生活には困らないほど稼げるようになったが、心のどこかにぽっかりと穴が空いていた。




「俺、最近…全然、女っ気ないな…」




ポケットに手を突っ込み、ふと自嘲気味に笑う。高校時代からの友人たちは結婚したり、彼女を作ったりしていたが、シュンスケは仕事を優先しすぎたせいか、恋愛からすっかり遠ざかっていた。忙しい日々の中で、恋人を作ることも忘れかけていたのだ。




夕暮れの空は淡いオレンジに染まり、都内の高層ビルのガラスにその光が反射してキラキラと輝いている。街行くカップルが笑い合う姿が目に入り、胸の奥に少しだけチクリとした痛みを覚える。




「俺だって…まあ、彼女とか、いてもいい年齢だよな」




立ち止まり、スマホを取り出す。SNSの通知はほとんど仕事関係か広告ばかり。プライベートなメッセージはここ数か月、ひとつも来ていない。




「はあ…」




ため息をつき、スマホをポケットに戻したシュンスケは、近くの小さな公園のベンチに腰を下ろした。平日の夕方、子供たちの声はもう聞こえない。街灯がポツリポツリと灯り始め、薄暗い影を落としていく。




そのとき、彼の視界の端に何かが映った。




ベンチの向こう、歩道の端に立つ一人の女性。長い金髪が夕日を受けてきらめき、背の高いスレンダーなシルエットがはっきりと見える。観光客だろうか、彼女は地図を見つめ、眉を寄せ、何度もスマホを確認している。




「外国の人…?」




シュンスケの胸が軽く高鳴った。外国人女性を目の前で見ることは珍しくないが、こうして困った様子をしているのを見ると、なんだか放っておけない気持ちになる。




心の中で「いや、でも関わったら面倒かも」と自分を制したが、彼女の不安げな表情がちらりと見えた瞬間、その理性はあっさり崩れ去った。




(続く)





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