第16話

◇ ◇ ◇ ◇




『あんなにおこることないのにハヤトのやつ』


『まあまあ、楽しみにしてたんでしょう?ここはダイから謝ってさ?』


『…まあ、うん。わるいのは、おれだもんね。』


『ふふ。うん。ダイは素直でいい子だね?』


『こどもあつかいしないでキイチくん。』


『ごめんごめん…ハヤトもダイも、来年には幼稚園の年長さんになるもんな。』


『そうだよ。そしたらそのつぎは“いちねんせー”になって、マリちゃんとおなじ“しょうがくせー”になってるんだ。キイチくんは…いないけどね。』


『うん。俺はその頃、中2だからね。』


『…じじい。』


『こら。反抗期か?』




大人の背より高い草木が伸びた河川。


人目につかない1角に、大きな丸い石。囲むように四角い石。


ままごとの机と椅子のよう配置されているこの場所で、2人の子どもが笑っている。




『…ダイ…キイチ…』


『あれ、ハヤト!良いところ、に…』


『ハヤ、ト…マリ、ちゃん?』


『たすけて…マリ、が…』



そして、唐突に加わった2人の子どもは、泣いていた。

姿を確認した2人の表情は、固まった。




『ここが、キミたちの秘密基地?』



ただ、ひとり。


黄色い帽子を被る男の子の腕を掴んで。

額から、背負うランドセルと同じ色の赤い血が流れる女の子の腕を掴んで。


“両手に花”状態で怯える子どもを捕まえている大人だけが、無邪気に、笑う。

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