第14話

冷蔵庫の中に収まっている野沢菜の漬物を箱ごと取りだし、ひょい、と1口頂く。


今のところ、丸1日休みである事実を利用し、秘密基地のようなこの家でひとり隠っていた。


自分以外の住人はいない、午後。




朝早くから仕事に向かった弁護士も、取材を受けに行った弟も、3ヶ月以上ぶりに数分だけ言葉を交わしたきりになってしまっている女優さんも。


誰も、いない。




「――!!」


単品では塩辛い後味が残る違和感を、ミネラルウォーターで流し込む。


そして響く通知音を、他人事のように聴いていた。


スウェットのポケットから取りだしたスマホを操作し、メッセージを読み取る。














時刻 22時

場所 〇×ホテル

訪問者 近江彗

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