第43話
ずっとずっとずっとずっと、ずっと。
世界でいちばん大切だった、女の子がいる。
驚きの眼差しを向けてくるちひろに、思わず吹き出す。ちひろも我に返って恥ずかしくなったのか、ほんのりと頬を赤く染めて怒った。もう、なんて眉間を寄せながら。
何も聞かされないまま、紗莉さんに着せられただろうウエディングドレス。
見惚れるほど綺麗でも、やっぱり芯は変わっていないちひろが、心から愛おしい。
ちひろが生まれてきてくれて、生きてきてくれて、30回目の誕生日。
どうしても叶えたかった〝サプライズ結婚式〟に協力してくれた人たちは皆、既に教会の中で待っていることだろう。
大きな扉の前で、滲む涙を誤魔化さないちひろに、右手を差し出す。
迷うことなく掴んでくれた小さなそれに、どくん、と心臓が疼いた。
神聖なる場所を提供してくれたスタッフが、微笑ましい表情のまま、扉を開いた。
眩く美しい光が、赤く広がるバージンロードを照らしている。
1歩、1歩。
大切に、歩幅を合わせて、ちひろと歩いた。
マスター。
端本に田所。
立花涼。
兼森柊。
笹塚湊。
美波翼。
和泉誉。
紗莉さん。
両親。
そして。
「是澤芽衣、是澤ちひろ」
「健やかなる時も、病めるときも」
「これまでも、これからも」
「お互いを支え、励まし、手を取り合って」
「永遠に、家族であることを誓いますか?」
兄貴。
神父の代わりに、俺たちの前で誓いを問うてくる家族。
俺とちひろの答えは、ブレることなく重なった。
「「誓います。」」
指輪を交換し、白く繊細なベールを捲る。
伝ったちひろの1粒の涙に、触れるだけのキスをした。
恵唯。
俺は、あの約束があってもなくても。
きっと一生、ちひろのことを、守り続けたよ。
だから、安心して。
俺に、ちひろのことを、幸せにさせてください。
包まれる盛大な拍手の中、ふわりと不自然な風が頬を撫でた。
俺だけの密かな誓いを、誰かが認めて、応援してくれたように。
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