第7話

「…で?」


「で?ああ、勿論謝ったよ?晟くんを独占しちゃってごめんね、って。俺は昨日夜9時過ぎには熟睡してた気するけど」


「…お前、早寝だもんな。夜型人間っぽいくせして。」


「あー…月曜日いちばん疲れるんだよ。休み明け。火曜から本調子になんだよねえ~正しく今日か」


「それどーでもいいけど…悪い。さんきゅ。」




けれど、堪えた。澪はきちんと話合わせてくれたらしいから。こういうとき気が利くコイツの謎。




「いーえ。で?今日は埋め合わせに放課後デートですかい?」


「…埋め合わせでもデートでもないけどまあ、待ってはいる」


「おーまじか。んじゃあその待ち合わせ相手に会ってまた文句言われない内にかーえろ。またな、晟。」




さっきと一緒のようで違う、今度は別れの意味で手をひらひら気だるげに振りながら澪は去って行く。座っていた場所、机と椅子の乱れなど気にする素振りもないままに。




なんとなく、その背を見届けていれば。


素振りもなく、いきなりくるりとこっちを振り返り、




「晟」


「なに」


「別れ話今からする男が違う女のこと考えながら曲なんか聴いてんなよー?あ、でも別れるときに情けは無用か。」


「……………」


「じゃあな。すっきり終われる事を祈っててやるわ。」


「…どーも。」




意味深に笑って、帰って行った。



…なんで分かったんだろあいつ。怖。侮れないなやっぱ。





掴み所が無いながらも何だかんだ味方をしてくれるらしい中学からの悪友の変わりに、乱雑にずれた席を元の位置に戻す。




それから、また。



今から別れ話をする予定の、さっき澪に理不尽に当たり散らしていたらしい、今の時点ではまだ俺の“彼女”という肩書きを持つ女を待ちながら。





柳の木の下で毎週月曜日の夜だけ会う、いつも同じ服装を見に纏う女が『最近よく聴いてる』と言った曲の続きを再生した。

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